業界・業種の垣根を越えたスタートアップ企業と地場企業の「価値共創」を目的とした、オープンイノベーション型のビジネスコンテスト「西日本FHビジネスコンテスト OPEN INNOVATION HUB 」。2021年秋から第2回目のエントリーと選考が始まり、いよいよ2022年3月11日に最終選考会を迎えます。今回は最終選考に残った10社の皆さんに、応募したビジネスモデルやそのビジネスにかける想いを伺いました。
■提案者プロフィール 九州アイランドワーク株式会社 代表取締役社長 馬渡侑佑さん 宮崎県出身、佐賀大学理工学部都市工学科卒業。ITベンチャー、コンサル会社を経て「チームラボ」へ。同社が進める教育プロジェクト「学ぶ!未来の遊園地」の立ち上げに従事。2019年1月より九州パンケーキを展開する「一平ホールディングス」の村岡氏と「九州アイランドワーク」を設立。
株式会社関家具 営業部部長 下條一利さん 福岡県出身、九州産業大学経済学部卒業。輸入家具のブランディングに興味があったことから「関家具」に入社。新規事業であるオフィス事業部を立ち上げ、海外からオフィス家具を輸入、ブランディングをしながら新規販路を開拓。現在は全国の中小家具店の振興に向けて取り組む。
ワークプレイス×家具で誕生したプロジェクト ――今回のビジネスコンテストには「九州アイランドワーク」と「関家具」の2社連携事業での応募ということですが、まずはどういった経緯で連携することになったのか教えてください。
馬渡: 当社はコワーキングスペースや個室ブースといったワークプレイスや、それを利用するためのアプリ開発などをしています。その事業を通じて出会ったのが、福岡県大川市発の家具の総合商社「関家具」の下條さんです。いろいろお話をするうちに、私たちは企業として相性がとてもいいなと思うようになりました。 というのは、「関家具」はワークプレイスに欠かせないオフィス家具や空間を提供できることが理由の一つ。さらに同社のクライアントである家具店といった、家具業界全体に新たなソリューションの提供ができることももう一つの理由です。
家具店がこれまで地域に提供していた“家具を販売する”という価値を、今後はそれ以外の価値として提供することが家具業界の新しい未来に繋がるのではないか。そんなことを下條さんとずっと話し合い、その実現に向けて連携事業としてプロジェクトを進めているところです。
――そのプロジェクトが、今回のビジネスコンテストに応募されたものですよね。内容について教えてください。
下條: 連携事業の第一弾として進めているのが、「既存の地方家具店を、ワークプレイス×本屋を併設した家具を体験できるお店にする」というプロジェクトです。このプロジェクトを考えた背景には、家具業界が抱える集客問題が深く関係しています。 弊社には日本全国に取引先の家具店がありますが、地方になればなるほど平日の集客が課題になっています。広い売り場に品質の良い家具をたくさん揃え、大容量の駐車場も設けて立地も良いのに、平日にお客さんがほとんど来ない。そういった相談を以前から受けていて、馬渡さんともその課題に対してどういったことができるか話をしていたんです。そこで地方家具店の遊休スペースを活用し、本屋やワークスペースを作ることで新しいお客さんを呼び込み、家具をじっくりと体験してもらうというアイディアが生まれました。
馬渡: ご存知の方も多いと思いますが、東京の代官山に「T-SITE 」という蔦屋書店がメインの商業施設があります。そこでは本が読める上にカフェでコーヒーも飲めて、くつろげる家具も置いてある…。地方にもそんな場所を作ったら人が集まるのではないかと考えました。 加えて長時間滞在してイスや机などの家具を実際に使うことで、地域の家具店にある価値を高められるのではないかとも考えています。最近は家具をインターネットで買う方も多いですよね。ところがサイズ感や使い心地などを見て触れて感じる“体験価値”がないまま購入されることは、メーカーだけでなく家具店にとってもデメリットになることも。そこでこのプロジェクトには「家具を体感して購入してほしい」という喚起の意味合いも含めています。 売り場と本屋、カフェ、ワーキングスペースを上手くゾーニングして、読書や仕事をすることで長時間滞在しながら家具も体験できる。そして使ってみて良かった家具をその場で購入することもできる…という流れを作りたいと思っています。
下條: 馬渡さんが得意とするデジタルやアプリ開発といったIoT技術を家具店にも取り入れ、ワークスペースの検索や予約といったシステムも構築できるように進めているところです。さらに大手出版取次会社と連携することもできたので、弊社を通じて書籍を販売するシステムを家具店にも提供していきたいと考えています。
共有財産を作り出し、地方と、暮らしを豊かに ――このプロジェクトによってどんな社会を実現したいですか?
馬渡: 家具店だけでなく、ゆくゆくは地域の空き家や空き店舗の活用にも発展していけたらと考えています。例えば空き家をショールームにして家具を展示し、体験して良かったら購入していただくという仕組みです。 その先には、地域にみんなで使える“共有財産”を増やしていきたいという思いもあります。今回、私たちが作ろうとしている家具店の空間は“共有の書斎”のようなイメージですが、今後は“共有のリビング”のような空間を作れたらいいなと思っています。子ども食堂のように、みんなで食事ができる空間ができることで救われる人も多いはず。家具を取り扱う「関家具」こそ、そういったコミュニティの場が作れるのではないかと思っているので、今回のケースだけでなく新たな形の共有財産を増やし、住み良い地域づくりに生かしていきたいと考えています。
下條: 我々としては、まず地域の方々が家具店に行く機会が増え、そこがコミュニティ化するという流れを生み出したいですね。
また、日本人の住空間レベルを向上させたいという思いもあります。30年ほど前にはおよそ2万軒あった家具店は減少の一途を辿り、現在は6,000軒にまで減少しているという話も聞いています。家具に触れる場所がどんどん減る一方、大型量販店の進出によってみなさんが購入する家具がどれも同じようなものになっているのでは。その傾向は住空間として面白味がないですよね?みなさんが暮らしをより楽しんでいただくためにも、店頭でいろいろな家具を見て、触れてもらえたら。そのためにもこのプロジェクトを成功させて、地方の家具店を活性化していきたいですね。
今後は実証実験店舗で本屋×ワークプレイスを稼働していく予定ということ。場所の情報については、「九州アイランドワーク」や「関家具」のホームページやSNSを通じて発信していく予定です。「家具店=家具を購入する場所」から、「家具店=読書やカフェを楽しみ、仕事もできる場所」という新しい概念が浸透する時代はもうすぐそこかも。今後が楽しみです!
お知らせ 「第2回西日本FHビジネスコンテスト OPEN INNOVATION HUB」最終選考会の様子は3月11日(金)13時より、以下YouTubeよりオンライン配信されます。 さらに詳しい九州アイランドワーク株式会社/株式会社関家具のプレゼンの様子、ぜひご覧ください。
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福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。