
白米がいくらでも食べられる、美味しいご飯のお供と言えば何でしょうか?みなさんそれぞれに、お気に入りの商品や食材を思い浮かべていることと思います。そんな日本人の心に訴えかけるご飯のお供を一つの事業として展開しているのがおかわりJAPAN株式会社。代表の長船邦彦さんはこれまでに1,500種以上の"お供"を食べたという、筋金入りのご飯のお供マニア。好きが高じて脱サラし、起業を果たしたというユニークな経歴の持ち主でもあります。事業化するまでの道のりや今後の展開についてお話を伺いました。

■おかわりJAPAN株式会社
代表取締役 長船邦彦さん
大阪府出身。大学卒業後に東京の食品メーカーに就職し、16年ほど勤務する。東京暮らしをきっかけに日本全国の品に興味を持つようになり、2021年にご飯のお供専門家として独立。2022年に福岡市へ移住して「おかわりJAPAN株式会社」を創業した。一児の父でもある。
東京暮らしをきっかけに日本全国のご飯のお供に魅了される
――社名からいろいろ気になりますが、まずは事業内容を教えてください。
長船:現在は三本柱を立てて事業を展開しておりまして、まず1つ目となるのがメディア事業です。「おかわりJAPAN」というウェブサイトを運営し、そちらでおすすめのご飯のお供や、ご飯のお供のアレンジレシピなどを紹介しています。そこから派生し、TV出演や雑誌記事の監修、メーカーの商品紹介などにも展開しています。
2目はECサイト「おうちでご飯のお供展 おかわりJAPAN商店」の運営です。注文が入ったらメーカーや生産者から商品が出荷されるという、産直形式のECサイトになります。
3つ目はご飯のお供に関するイベント事業です。昨年は福岡市の大丸福岡天神店で初のリアル店舗イベントを開催することができました。
これらの事業で魅力的なご飯のお供を紹介するとともに、年々減少しているお米のニーズを高め、"ごはん食"の価値を上げることもミッションに掲げています。

――長船さんがご飯のお供に魅了されたきっかけは何だったのでしょう?
長船:幼い頃からご飯が大好きで全国的に親しまれるご飯のお供を食べて育ってきました。大学卒業後は東京の食品メーカーに就職し、地元の大阪を出て東京で暮らすことになります。そこでデパートの物産展やアンテナショップに足を運んだ際に、今まで食べたことがない日本全国の魅力的なご飯のお供に出会い、興味を抱いたことがきっかけになりますね。
コロナ禍を経験したことで起業を考え、福岡へ移住
――なぜ起業して事業化しようと思ったのですか?
長船:会社員時代、2013年頃からご飯のお供を紹介するブログを運営していたんですよ。それが反響を呼ぶようになり、ご飯のお供に関するTV番組や雑誌などのメディアにちょこちょこ出演させていただくようになりました。
本格的に事業化しようと思い立ったきっかけは、新型コロナウイルスの流行です。コロナ禍でお取り寄せグルメの需要が右肩上がりになり、メディアの出演依頼も増え、メーカーからも「売り上げが伸びないから紹介してほしい」と問い合わせをいただくようになって、会社員との両立が難しくなり。まさかコロナ禍といった事態が起きるなんて思いもしませんでしたし、「一度きりの人生なんだから好きなことをしてみよう!」という思いで起業しました。

▲テレビ出演時
――東京ではなく福岡で起業されたのは何か理由があるのですか?
長船:会社を設立したのが昨年(2022年)の3月で、それに合わせて前月の2月に福岡へ移住しました。その理由にも新型コロナウイルスが大きく関係していまして、実はその頃に子どもを授かったことがわかったのです。東京は人が多いし、家も狭いし、世の中の状況が大きく変化した時に対応するのが大変そうだなと考えるように。そこで地方都市への移住を検討し、目に留まったのがここ福岡市でした。
父と母が九州出身だったので親しみがあったことと、福岡市の特定創業支援等事業といった充実の創業サポートにメリットを感じ、福岡市に移住することに決めました。
――起業するにあたり、最初に取り組んだことは何ですか?
長船:資金に関する準備ですね。会社員時代から起業に向けて貯金はしていましたが、起業する1年ほど前から金融機関に融資の相談もさせていただき、事業計画を作成していきました。
――起業前後で困ったなと感じたことはありましたか?
長船:思ったほど売り上げが上がらないことですね(苦笑)。現状の売り上げとしてはECサイトが一番大きなウェイトを占めていますが、コロナ禍で需要の伸びを感じていた矢先に物価高で消費者マインドが冷え込んでしまって。私自身もそうですが、みなさん財布の紐が固くなっているようですね。そんな中でどうやって商品を販売していくかが課題になっています。
知られざるご飯のお供の魅力を世に広めたい
――ECサイトで販売している商品はどのような基準で選ばれているのですか?
長船:自分自身が美味しいと思っていることが大前提なのですが、大々的に世間に知られていないものを扱うようにしています。特に地方の生産者さんとなると、美味しいものを作るのは得意なのに販路を広げることは苦手という方も多いんですよ。そういう方たちに対しては成果報酬という形式で販売をさせていただいています。
ただ僕としては単純に商品をサイトに掲載して販売するだけではなく、ファンを作って一緒に商品を育てていくという感覚でやってはいますけどね。
――「おかわりJAPAN」のオリジナル商品を開発することもあるのですか?
長船:コラボレーションということで一緒に商品開発をすることはありますが、完全オリジナルはありません。それはメーカーや生産者さんの競合になってしまうためです。オリジナル商品ではありませんが、現在進めているのが僕のおすすめ商品をセレクトした「詰め合わせBOX」の販売です。通常ですと1件の注文に対して1メーカーの商品しか送ることができませんが、このBOXではメーカーの枠を超えて、季節やイベントにちなんだ商品を選んでお届けすることができます。
この方法で注文が増えていけば、いずれはお米とご飯のお供のセットや、サブスクという形で定期的に送付できたらいいですね。

景気に左右される食品業界。最初の資金準備が大切だと痛感
――いろいろな展開も考えていらっしゃるようですが、起業に関して今だからこそやっておいて良かったと思うことはありましたか?
長船:起業するにあたって先に起業した知人にいろいろ相談をしていたのですが、その方から「最初の段階が最も融資を受けやすい」という話を聞いていました。動き出してから売り上げが見込めなくなってしまうとなかなかお金を貸してもらえないという話だったのですが、確かにそうだなと。
特に食品業界は景気に左右されやすいので、最初に資金を調達しておいて良かったなと思っています。
――福岡を拠点に活動するメリットは感じますか?
長船:先ほども少しお話ししましたが、福岡は起業に関する支援が充実していること。創業者を応援しようという雰囲気が街にあることがいいですよね。
それと、街がコンパクトなのも魅力だと思います。飛行機(空港)や新幹線のアクセスがすごく便利ですし、東京に比べると家賃を抑えられることもメリットになるのではないでしょうか。
――今後の展望を教えてください。
長船:福岡を最強の"ご飯のお供どころ"にすること。福岡の方ってラーメンやうどんのお店にはこだわりを持っていることが多いのですが、ご飯のお供が充実していることに意外と気がついていないように感じています。
例えば明太子という最強のご飯のお供があるのに、福岡の方はお気に入りの明太子は特にないとおっしゃるんです。他にも、天ぷら屋さんで見かけるイカの塩辛や、有明海の海苔、高菜漬け、北九州のぬか炊きなどなと、これだけ魅力的なご飯のお供が集まっている土地は全国でも指折りだと思います。この魅力的なご飯のお供のコンテンツをもっと生かしていきたいですね。

――これから起業を考えている人にアドバイスをお願いします。
長船:起業して1年になりますが、まだまだ私も「これで大丈夫かな」と悩んでいるところです。事業が思い通りに行かなくて当然だとは思いますが、その中でどう課題を打開していくかが起業家として求められることだと自分に言い聞かせています。
その心意気に加えて大事になるのが、やはり資金だと思います。会社となると個人以上に信用が必要になり、同時にお金がないと何もできないので、そこは最初にしっかり準備しておくべきだと思います。
おかわりJAPAN株式会社について
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817
◎コワーキング施設「The Company DAIMYO」
福岡県福岡市出身・福岡市在住。地元の大学を卒業後、ペット雑誌「犬吉猫吉」や旅行情報誌「九州じゃらん」の編集に携わり、フリーライターとして独立。ペット雑誌の経験を活かし、ペット関連の取材や執筆をする"(自称)ペットライター"としても活動中。趣味はネコグッズ集め、ライブ鑑賞、プロ野球観戦。