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飲食店の利益率って?経営に必要な原価率の考え方を解説!

By 市川えり

|
2022.01.28

飲食店の売上を伸ばしたり経費を削減したりするためには、基本的な経営数値の把握が大切です。特に利益率や原価率の理解を深めれば適正な目標設定が可能になり、経営改善への取り組みに活用できます。この記事では、飲食店経営に必要な数字である利益率や原価率の基礎知識をご紹介します。

飲食店の利益って?

飲食店における利益とは、売上から必要経費を差し引いて残ったものです。

飲食店の売上と経費

飲食店の売上とは、お店で提供するフード・ドリンク・その他物品販売の対価となる金銭です。売上高と呼ぶこともあります。飲食店の経費とは、食材費・人件費・店舗の賃料・消耗品費など、飲食店経営に必要不可欠な費用を指します。

飲食店経営者が個人的に消費したり所有したりするものは、経費として認められません。個人的な費用の経費計上が税務調査で発覚すると、脱税行為とみなされる可能性があります。その際は追徴課税などの厳しいペナルティが課されるため、経費の計上と管理には細心の注意が必要です。

飲食店経営で注目すべき利益

「損益計算書」に記載される利益には、5つの種類があります。その中でも売上総利益と営業利益は、飲食店経営において特に注目するべき利益です。それぞれの違いを以下にまとめました。

利益の種類

利益の名称

算出方法

売上総利益(粗利)

売上-売上原価

営業利益

売上総利益(粗利)-販売費及び一般管理費

経常利益

営業利益+営業外収益-営業外費用

税引前当期純利益

経常利益+特別利益-特別損失

当期純利益

税引前当期純利益-法人税等

売上総利益(粗利)

全体の売上から売上原価を差し引いた金額です。「粗利(あらり)」と呼ぶこともあります。売上原価以外の経費を差し引く前の金額であるため、経営上のおおまかな収益性を表しています。売上原価とは、実際に販売した商品の仕入や製造にかかった費用です。飲食店では主に食材費が該当します。

営業利益

売上総利益から販売費と一般管理費を差し引いた金額です。本業から得られた利益を表しています。販売費は商品の販売に関して発生する費用で、一般管理費は飲食店の管理業務に関して発生する費用です。これらを合わせて、販管費と呼ぶこともあります。代表的な販管費は人件費・賃貸料・水道光熱費・通信費・保険料・消耗品費などです。

経常利益

営業利益に飲食店の本業以外で得た営業外収益を加算し、そこから営業外費用を差し引いた金額です。本業以外の収益や費用とは、株や為替などの金融商品の売買による利益や損失を指します。経常利益は主に、会社の業績が反映される数値とされています。

税引前当期純利益

法人税などを支払う前の利益です。経常利益に特別利益を加算し、そこから特別損失を差し引いて算出します。特別利益・特別損失は、臨時的に発生した利益や損失のことです。代表的なものとして、固定資産売却益・固定資産売却損や投資有価証券売却益・投資有価証券売却損などが該当します。

当期純利益

税引前当期純利益から法人税などを差し引いた最終的な利益です。一事業年度におけるさまざまな要因が反映されるため、マイナスになる場合は「当期純損失」と呼ぶこともあります。

利益率と原価率とは

売上に対する利益の割合を、利益率といいます。利益率は、飲食店経営の収益性や効率性を見るための指標です。店舗の規模や売上が大きくなると利益も増えますが、その分コストもかかります。単純に利益の額だけではなく、利益率・原価率・その他費用を考慮したトータルな経営判断が重要です。

利益率の種類

利益率には以下の5つの種類があります。

  • 売上総利益率(粗利率)

  • 営業利益率

  • 経常利益率

  • 自己資本利益率(ROE)

  • 総資本利益率(ROA)

この中でも一般的に飲食店経営において重要とされているのは、売上総利益率(粗利率)と営業利益率です。

売上総利益率(粗利率)

飲食店の商品・サービスの実力や、おおまかな収益性を示す指標です。売上に対する売上総利益の比率が大きくなるほど、売上総利益率も高くなります。この数字が高いほど商品・サービスに付加価値をつけて効率よく売上をあげていると考えられます。そのためには、原価を低く抑えた利幅の大きい商品を売るなどの努力が必要です。売上総利益率は販管費を差し引く前の割合であるため、より正確な経営判断にはコスト意識が重要になります。

営業利益率

売上に対する営業利益の割合を示す指標で、売上高営業利益率と呼ぶこともあります。一般的に営業利益率が高い場合、固定資産の売却や資産運用以外の本業で稼ぐ力が高いと判断されます。飲食店の存続を左右する非常に重要な指標といえるでしょう。

飲食店の利益率の目安

飲食店業界における売上総利益率の目安は、平均値で68.6%です。飲食の種類別の売上総利益率を以下にまとめました。

売上総利益率の目安

業態

売上総利益率の目安

日本料理店

63.9%

西洋料理店

65.8%

中華料理店

66.8%

そば・うどん店

66.6%

すし店

57.6%

カフェ・喫茶店

70.5%

ハンバーガー店(イートイン)

62.8%

お好み焼き店

68.7%

バー・クラブ

82.9%

出典:日本政策金融公庫「2019年(令和元年)中小企業の経営指標調査」をもとに筆者作成

また経済産業省の調査によると、飲食企業の営業利益率の平均は8.6%でした。個人経営の店を含めると、約5~8%が営業利益率の目安です。これらの数値はさまざまな業種や業務形態の平均値であるため、必ずしも自社に当てはまるとは限りません。自社の前年比や同業他社の動向なども合わせた目標の設定が大切です。

原価率とは

売上に対する売上原価の割合です。飲食店経営において重要視される指標で、主に食材費を指します。一般的に30%が目安とされていますが、扱う食材や店舗の業態によって適正な原価率は異なります。

業態別原価率

業態

原価率

ラーメン

35%

居酒屋

38%

焼き肉

35%

喫茶

25%

ファーストフード

35%

西洋料理

35%

レストラン

38%

日本料理

35%

東洋・エスニック

25%

カフェバー

35%

出典:カシオ独自統計「小規模飲食店各業態の平均利益率・原価率・人件費率を大公開」より抜粋

すべてのメニューの原価率を30%にすると、食材ロスが増えて結果的に原価率が高くなってしまう可能性があります。原価率の高いメニューを安く提供し、原価率の低いメニューも一緒に注文してもらうための工夫が必要です。

利益率と原価率の算出方法について

飲食店経営の指標となる数値の目安を紹介しましたが、大切なのは自社の利益率や原価率の把握と改善です。基本的な指標となる売上総利益率・営業利益率・原価率の計算方法について解説します。

利益率の基本的な計算方法

利益率は基本的に以下の計算式で算出します。

【利益率(%)=利益÷売上×100】

売上総利益率(粗利率)の出し方

売上から売上原価を差し引いた利益が売上総利益で、以下の計算式で算出します。

【売上総利益率(%)=売上総利益÷売上×100】

売上総利益率は、景気や商品力に左右される傾向があります。売上総利益率が低い場合は、原価率が高くなっていないか、店舗や商品の訴求力が落ちていないかを確認しましょう。

営業利益率の出し方

売上総利益から販管費を差し引いた利益が営業利益で、以下の計算式で算出します。

【営業利益率(%)=営業利益÷売上×100】

営業利益率が低い場合は、売上自体が少ないか売上原価やその他経費がかかりすぎている可能性があります。

原価率の簡単な計算方法

原価率は、以下の計算式で算出します。

【原価率(%)=売上原価÷売上×100】

上記の計算式は売上に対する売上原価の算出方法です。逆に原価率から売価を設定する場合の計算式は、以下のように算出します。

【原価÷原価率=売価】

たとえば、原価300円の商品を原価率を30%で販売するときの売価は【300÷30%(0.3)=1000円】です。

飲食店の適正なFLコスト比率の考え方とは

飲食店の経営指標には、利益率や原価率のほかに「FLコスト比率」があります。言葉の意味や経営に活かす考え方を、以下で解説します。

FLコストとは

Food(食材原価)とLabor(人件費)の合計額を指し、売上に対するFLコストの比率を「FLコスト比率」または「FL比率」といいます。
FLコスト比率は、売上に対して食材費と人件費がどれくらいかかっているかを見る指標です。営業利益は売上から経費を引いて算出しますが、飲食店経営ではその多くをFLコストが占めています。また、Rent(店舗の家賃)を含めてFLRコスト比率を指標にする場合もあります。

FLコスト比率の計算方法

FLコスト比率は、以下の計算式で算出します。

【FLコスト比率(%)=(食材原価+人件費)÷売上×100】

FLコスト比率の目安

飲食店経営では、一般的にFL比率を60%以下(F=30~35%・L=25~30%)にするのが適正とされています。売上が200万円の場合は、Fコストを70万円、Lコストを50万円に収めるのが目安です。

FLコストを下げる方法

一般的にFLコスト比率が65%を超えると、経営の存続が危ぶまれるといわれています。FLコストを下げる方法を、以下にまとめました。

仕入原価を下げる

  • 仕入れ先に価格交渉をする

  • 仕入れ量を増やして単価を下げてもらう

  • 仕入れ先の変更や見直しを検討する

  • 市場や生産者から直接仕入れる

原価率を下げるためだけに安易に材料の質を落としたり、極端な人件費削減をしたりすると、顧客離れやクレームの原因になります。仕入原価を下げる際は、上記の方法もふまえて検討することが大切です。

食材廃棄ロスを減らす

  • 棚卸や在庫管理の徹底

  • 廃棄ロスの傾向を知る

  • 売上予測を立てて仕入れ量を調整する

  • メニューの数を減らして使い回せる材料を選ぶ

食材の廃棄ロスを減らすと、原価率は下がります。定期的な棚卸を行って廃棄ロスの傾向を掴み、正確な原価率を把握するように努めましょう。

価格を見直す

競合店との差別化を図るため価格を安くして提供しているなら、適正価格での提供を検討しましょう。また、気候による材料費の高騰や輸入品の為替相場による価格変動も原価率が上がる要因になります。柔軟に対応できるメニュー作りも重要です。

オーバーポーションを防ぐ

オーバーポーションとは、規定されているレシピの分量よりも多く食材を使用することです。その結果、不安定な量によるクレームや顧客満足度の低下につながる恐れがあります。原価率が上がる原因にもなるため、レシピ遵守などの従業員教育も重要です。

適正なシフト管理

自社の繁忙期や繁忙時間の売上データを参考にして、従業員を配置しましょう。アイドルタイム(顧客のいない空き時間)における業務のマニュアル化も必要です。客入りが見込めない場合は、従業員のシフトアウトを検討します。ただし、あまりに頻度が多いと仕事に対するモチベーションの低下につながるため、注意が必要です。

オペレーションの改善

  • オペレーションマニュアルの作成

  • POSレジシステムの導入

  • 券売機やドリンクバーの導入

  • 食器洗い洗浄機や掃除ロボットの利用

  • 店内レイアウトや動線を見直す

円滑なサービス提供のために、オペレーションの改善を検討しましょう。マニュアルの作成と周知徹底は、サービス品質を安定させるためには必要不可欠です。厨房機器の設備投資やシステム導入にはコストがかかりますが、作業の簡略化と効率化が期待できます。

業務効率化ツールの導入

近年、非接触決済が注目されており、店を選ぶ際の判断基準になっている傾向が見られます。キャッシュレス決済やオーダーシステムは、会計業務の効率化が図れて釣り銭間違いなどのミスを防げるのが大きなメリットです。ただし導入にはコストや手数料がかかるため、費用対効果をしっかり見極めることが求められます。

「Paymul(ペイマル)」は、初期費用・月額使用料0円で利用できるテイクアウト予約システムです。手数料も5%と比較的低い水準で利用できるのが特徴です。

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まとめ

利益率をあげるにはコストカットが手近な方法ですが、必要な経費まで削減しないように注意しなければなりません。特に食材原価や人件費は、顧客満足に直接つながる重要な費用です。自社に適正な数値を参考にして、無駄にしたり削減しすぎたりしない工夫をしましょう。

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