RE100は、事業活動で消費するエネルギー源を100%再生可能エネルギーにする取り組みです。影響力のある各国の企業が参加しており、国際的なイニシアチブとなっています。本記事では、RE100の概要や参加のメリット、再生エネルギーの調達方法などについて説明します。
RE100とは?意味や読み方を確認
地球環境問題を解決するために、さまざまな取り組みが行われています。その中の1つが「RE100」、日本での読み方は「アールイーひゃく」です。まずは、RE100の意味や設立の経緯について確認しておきましょう。
再エネ化に取り組む企業の連合体
RE100は「Renewable Energy 100%」を意味します。事業活動に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーから調達することを目的とした、国際的イニシアチブ(企業連合体)です。2022年(令和4年)10月現在、世界で380社以上、日本企業は70社以上がRE100に加盟しています。
再生可能エネルギーとは
石油、石炭、天然ガスなどの限りある資源と異なり、繰り返し使えるエネルギー資源を再生可能エネルギーといいます。太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス(動植物に由来する有機物)などが再生可能エネルギーの代表的なものです。
RE100が誕生した背景
RE100は2014年(平成26年)、国際環境NGOのThe Climate Groupが主導し、発足しました。RE100誕生の背景には、地球温暖化や異常気象など、地球規模の環境問題があります。
地球環境問題を解決するには再エネ化を推し進め、脱炭素社会へ移行していかなければなりません。各国の影響力のある企業がRE100に加盟してアピールすれば、世界中の人が地球環境問題に関心を持つきっかけになります。
パリ協定の目標達成を目指す
RE100発足の翌年の2015年(平成27年)、フランスのパリで行われた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で、パリ協定が採択されました。パリ協定とは、気候変動問題解決に向けた国際的合意です。パリ協定では、次のような目標を掲げています。
パリ協定により、脱炭素社会実現に向けての動きが加速しました。RE100はパリ協定の目標達成に貢献する具体的な取り組みとして、大きな意味を持つものとなっています。
EP100やEV100との違い
RE100と似た用語として、EP100やEV100があります。いずれもRE100と同様、国際的な企業の連合体です。EP100やEV100についても概要を確認しておきましょう。
EP100
「EP」とは「Energy Productivity(エネルギー効率)」のことです。EP100は、事業のエネルギー効率を倍増させること(省エネ効率50%改善)を目標にする企業で組織されています。
EV100
「EV」とは「Electric Vehicle(電気自動車)」を意味します。EV100は、事業活動で使う車を100%電気自動車にすることを目指す企業の連合体です。
RE100の4つの加盟条件
企業がRE100に加盟するには条件があります。RE100の4つの加盟条件について、みてみましょう。
1. 世界的に認知されており影響力がある
RE100に加盟できるのは、世界的に認知度・信頼度が高い企業です。各国で認知されているブランドを保有しているなど、影響力がある企業でなければなりません。
2. 電力消費が100GWh(日本では50GWh)以上
RE100に加盟するには、消費電力量の条件をみたす必要があります。年間の電力消費量が100GWh以上の企業でなければ、RE100に加盟できません。ただし、日本企業については50GWh以上に条件が緩和されています。
3. RE100の目的を遂行できる
加盟企業は、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーから調達しなければなりません。100%再エネ化という、RE100の目的を遂行できる企業であることが求められます。
4. 主要な多国籍企業
RE100に加盟できるのは、フォーチューン1000またはそれに相当する主要な多国籍企業です。フォーチューンとはアメリカのビジネス誌で、フォーチューン1000とはフォーチューン誌によりランク付けされた高収益企業です。
「再エネ100宣言 RE Action」とは?
RE100の加盟条件は厳しく、影響力がある大企業でないと加盟できません。中小企業がRE100に参加するのは、現実には困難です。ただし、中小企業や小規模事業者でも参加できる国内の枠組みとして「再エネ100宣言 RE Action」が設けられています。
中小企業でも参加できる日本国内の枠組み
「再エネ100宣言 RE Action」は、2019年(令和元年)に発足した再エネ化促進のプラットフォームです。日本国内の企業を対象としており、2022年(令和4年)10月現在、280以上の企業・団体が参加しています。
参加しているのは、使用する電力を100%再生可能エネルギーへと切り替える意思があり、それに向けて行動している企業・自治体・教育機関・医療機関などです。
「再エネ100宣言 RE Action」の参加条件
「再エネ100宣言 RE Action」は、RE100の対象となる年間消費電力量が50GWh以上の企業は参加できません。参加できるのは、次の条件をみたす企業です。
2050年までに使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する目標を設定し、対外的に公表する
再エネ化促進に関する政策提言へ賛同する
消費電力量や再エネ達成率を毎年報告する
「再エネ100宣言 RE Action」の参加条件は、RE100のように厳しくありません。RE100に加盟できない中小企業でも「再エネ100宣言 RE Action」には参加できるでしょう。参加すれば、再エネ化を対外的にアピールできるチャンスにもなります。
「再エネ100宣言 RE Action」の参加特典
「再エネ100宣言 RE Action」のメンバーはロゴの利用ができるので、再エネ化を社内外へ広くアピールするのに役立つでしょう。再エネ導入情報の収集や交流等を目的とした、脱炭素コンソーシアムへも参加できます。
さらに、参加企業にはRE100加盟団体・企業との交流の場も設けられています。再エネ化を実現している先進企業と交流する機会が得られるのもメリットです。
企業が再エネ化に取り組むメリット
企業の再エネ化を目指す取り組みとして、RE100や「再エネ宣言 RE Action」などの枠組みが用意されています。企業が再エネ化に取り組むことにはどんなメリットがあるのか、ここで整理しておきましょう。
地球環境保護に貢献できる
事業活動に使うエネルギーを再生可能エネルギーに転換すれば、地球温暖化の抑制に貢献できます。企業には利益追求のための活動だけでなく、社会貢献が求められます。再エネ化の取り組みは、社会貢献としてステークホルダーに評価されるでしょう。
ESG投資家にアピールできる
投資家の間では、環境(Enviroment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮する企業に投資するESG投資が活発です。再エネ化を促進すれば、ESG投資に関心がある投資家へアピールできます。資金調達のうえでも有利になるでしょう。
化石燃料高騰のリスクを回避
化石燃料は限りある資源なので、いずれ値段が高騰する可能性があります。再エネ化を進めれば、燃料高騰のリスクを回避できるでしょう。エネルギーコストの管理体制も強化できるので、コストの増大を防げます。
企業のブランド力が向上
現代の消費者は、環境問題に関心があります。再エネ化のような環境に配慮した経営を行っている企業は、消費者からも評価されるでしょう。ブランド力が向上し、企業のイメージアップにつながります。
優秀な人材を確保できる
現代の若者は、SDGsやESGなどの脱炭素社会や環境問題に関するキーワードに敏感です。再エネ化をアピールすれば、就職活動中の若者にも自社を印象づけられます。学生から注目されれば多数の応募が集まり、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
再生可能エネルギーの調達方法
事業活動で使う電力を再エネ化するために、電力の調達方法を考えなければなりません。再生可能エネルギーの調達方法には、自社で発電する方法と外部から購入する方法があります。
自社で発電する方法
自社が保有する土地に発電設備をつくり、自社で発電した電力を自社で消費する方法です。しかし、大規模な設備が必要になる水力発電や火力発電は現実的ではありません。
屋根を使ってできる太陽光発電なら、比較的導入しやすいでしょう。初期費用やメンテナンスのコストがかかりますが、補助金を利用できる可能性もあります。
外部から電力を購入する方法
自社で発電できない場合、外部から再エネ電力を調達して再エネ化を図る方法があります。外部から再エネ電力を調達する方法は、次の5つに分かれます。実現できそうな方法を検討してみましょう。
企業の敷地内に設置した他社保有の設備からの電⼒購入
企業の敷地外に設置した発電設備から専用線経由で直接購入
企業の敷地外に設置した発電設備から系統経由で直接調達
電力小売会社と契約
再エネ電⼒証書の購入
再エネ電力証書とは
再エネ電力の持つ環境付加価値を電力と切り離して証書化し、取引可能にしたものです。グリーン電⼒証書、J-クレジット(再エネ)、非化石証書(再エネ)などが該当します。
再エネ電力証書を購入すれば、発電設備を持たなくても、再エネ化に貢献したものとみなされます。他の方法で再エネ化が難しい場合、再エネ電力証書を購入する方法も検討してみましょう。
まとめ
事業で使うエネルギーを再エネ化すれば、地球環境保護に貢献できるだけでなく、企業価値向上にもつながります。「RE100」は大企業向けの国際的イニシアチブですが、国内中小企業向けの「再エネ100宣言 RE Action」という企業連合体も設けられています。こうした枠組みも活用しながら再エネ化を進め、企業のブランド力を高めましょう。
AFP(日本FP協会認定)、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。