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リカレント教育とは何?注目の背景や企業が導入するメリットをわかりやすく解説!

By 森本 由紀 |
公開日 2023.03.08

最近よく見聞きする言葉に「リカレント教育」があります。本記事では、社会人に必要なリカレント教育とは何かを解説します。なぜ注目されているのかを理解し、自らの学びを考えてみましょう。企業がリカレント教育を推進するメリットについても説明します。

リカレント教育とは?

最近、リカレント教育への関心が高まっています。リカレント教育とは何か、意味や定義を確認しておきましょう。

社会人の学び直し

リカレント教育の定義は「社会人を対象とした学び直しのための教育」です。英語の「リカレント(recurrent)」には「何度も繰り返す」「循環する」という意味があります。社会に出てからも繰り返し教育を受けるという意味で、リカレント教育という言葉が使われているのです。

繰り返し学んで仕事のスキルを上げる

学校を卒業して社会に出たら、もう勉強は終わりと考える人もいるかもしれません。しかし、働いているうちに、勉強の必要性に気付くこともあります。

社会人にも学び直しのチャンスがあれば、より仕事のスキルも高められるでしょう。働くことを前向きにとらえる人が増え、リカレント教育が注目されるようになったのです。

生涯学習との違い

社会人の勉強といえば、これまでも「生涯学習」という言葉がありました。リカレント教育と生涯学習は、勉強する目的が異なります。リカレント教育は、仕事に活かせる知識を身につけるものです。具体的には、法律や会計の知識、外国語、プログラミングなどが考えられます。

生涯学習とは

生涯学習は仕事をするための勉強に限られません。生涯学習の定義は、人々が生きている間に行うあらゆる学習です。趣味やスポーツ、文化活動、ボランティアなど、生きがいに通じるものなら何でも対象になります。

リスキリングとの違い

リカレント教育と並んで最近よく見聞きする言葉に「リスキリング」があります。リスキリングの定義は、社会人が新しいスキルを身につけることです。リスキリングも社会人の学び直しを意味しますが、リカレント教育とは多少違いがあります。

リカレント教育は働く側が主体

リスキリングは企業側が主体となって、従業員のスキル向上の機会を与えるものです。これに対し、リカレント教育は働く側が主体となります。一旦休職や退職して会社を離れ、大学などで勉強し直すようなケースがリカレント教育です。

「リスキリング」の意味とは?人材育成での重要性や実施するための5ステップを解説!

リカレント教育が注目される背景

今なぜリカレント教育が注目されているのでしょうか。その背景を探ってみましょう。

デジタル技術の急速な発展

近年のデジタル技術の発展は目覚ましいものがあります。国は企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進中です。DXとは、デジタル技術を用いて企業の業務や製品・サービスなどを変革することを意味します。リカレント教育が推進される背景には、DXに対応できる人材育成の必要性もあります。

今後はDXへの対応が不可欠

これからの時代、どこの業界でもデジタル技術を使いこなし、イノベーションを起こせる人材が求められます。もはやこれまでと同じ知識や技術では通用しません。社会人がDXに対応できるスキルを身につけるためには、リカレント教育が欠かせないでしょう。

日本人の平均寿命の延び

日本人の平均寿命は、男性も女性も80歳以上です。仮に60歳で仕事を辞めると、老後の期間が長くなってしまいます。老後の生活費は、公的年金だけでは不十分です。できるだけ長く働くことが、老後の安心につながります。そして、長く働くためには、仕事のスキルを向上させることが必要です。

労働力不足に備える必要がある

少子高齢化により、労働環境も変化しています。企業においては、今後は高齢者の労働力を活用せざるを得ません。従業員に長く働いてもらうために、企業側もリカレント教育を推進する必要があるでしょう。

ライフスタイルの多様化

1つの会社に就職して定年まで働くというスタイルは、もはや当たり前ではなくなりました。今は子育て中でも、定年後でも、働きたい人は働ける環境を求めています。個人の事情に合わせた働き方を選ぶためには、新たなスキルを身につける必要性が高いでしょう。リカレント教育が注目される背景には、ライフスタイルの多様化もあります。

我が国のリカレント教育の現状

日本でリカレント教育が推進されるようになった背景には、国際的な状況もあります。内閣府が公表している資料(「選択する未来2.0」報告 参考資料)では、日本のリカレント教育が諸外国と比べて遅れていることが報告されています。日本のリカレント教育の現状をみてみましょう。

社会人の学び直しは世界最低水準

内閣府の資料では「我が国のリカレント教育は、OECD諸国と⽐較すると、柔軟性が低く、労働市場のニーズに合致していない」と分析されています。たとえば「教育機会を柔軟に得ることができるか」「教育の効果がどれだけあるか(賃金リターンなど)」のそれぞれについて、日本のスコアはどちらも34か国中33位となっています。

大学で学ぶ社会人が少ない

日本では、大学・大学院の正規課程で学んでいる社会人の割合が低いことも特徴です。2018年(平成30年)時点で、25歳以上の学士課程入学者の割合はOECD平均が16.0%であるのに対し、日本は2.5%にすぎません。30歳以上の修士課程入学者の割合はOECD平均が26.0%であるのに対し、日本は13.2%です。

企業のリカレント教育導入状況

社会人がリカレント教育を受けるためには、働きながら学べる環境が必要です。企業において、教育訓練休暇制度や教育訓練短時間勤務制度の導入が欠かせません。

リカレント教育を支援する企業は2割未満

2019年(平成31年)時点で、教育訓練休暇制度を導入している企業の割合は8.5%にとどまります。教育訓練短時間勤務制度の導入企業は6.4%です。いずれの制度も、導入予定の企業を含めても20%未満となっています。

内閣府「選択する未来2.0」報告 参考資料

企業がリカレント教育を導入するメリット

企業においては、リカレント教育の導入や、従業員のリカレント教育推進が求められます。企業がリカレント教育に取り組む必要性やメリットを知っておきましょう。

生産性が向上する

企業の利益向上のためには、限られた人材で生産性を上げることが重要です。従業員の能力が上がれば、生産性は向上します。企業側で積極的にリカレント教育を推奨すれば従業員全体のレベルが上がり、業績向上につながります。

DX推進に役立つ

これからの時代、企業が生き残るためにはDXが欠かせません。しかし、社内でDXを進めようにも、知識や技術のある人材がいないことがあります。リカレント教育を進めれば、DXに対応できる人材を育成できるでしょう。

社内の活性化につながる

従業員が積極的に学んでいる会社には、活気があります。勉強したことを仕事に活かせれば、働きがいを感じられるからです。リカレント教育の推進は、社内の活性化につながるでしょう。

人材不足に対応できる

リカレント教育推進により、人材不足も解消できます。スキルアップに必要な学びを支援する会社なら、従業員の定着率も上がるでしょう。中高年のベテラン従業員を長期間活用できるのもメリットです。

リカレント教育のために企業ができることとは?

企業がリカレント教育のためにできることには、何があるのでしょうか。リカレント教育のメリットを得るためにも、企業ができることを知っておきましょう。

企業内研修の実施

リカレント教育は、企業が主体となって行うこともできます。自社で企画すれば、業務上必要性の高いスキルに絞った研修が可能です。社外から講師を招き、従業員の知識・技術を高めるための研修ができないか考えてみましょう。

自己研鑽のための休暇制度を整備

会社を休めなければ、従業員が学校などで勉強するのは困難でしょう。リカレント教育推進のためには、スキルアップや学び直しのために休暇を取得できる環境が理想です。従業員の自己研鑽に利用できる休暇制度を導入しましょう。

進学・留学などのサポート

大学や大学院への進学や、海外留学をしたい従業員もいるでしょう。会社が進学や留学をサポートすれば、従業員は安心して学び直しができます。学費の支援や休職制度の導入を考えましょう。

学習費用の支援

リカレント教育を受ける際は、費用がかかります。お金の問題で学びをあきらめることのないよう、学習費用の支援も必要です。費用的な支援をすれば、学び直しを希望する従業員も増えるでしょう。

キャリアパス実現のための情報提供

リカレント教育には、多くの人が関心を持っています。しかし、キャリアアップのために何を学んだらよいか、わからない人もいるでしょう。従業員のキャリアパス実現のため、会社が積極的に情報提供することも必要です。

国が行うリカレント教育支援の取り組み

我が国のリカレント教育は、国際的にみても遅れているのが現状です。政府はリカレント教育を支援するために、さまざまな取り組みを行っています。

国が行っている支援は、労働者に対する支援と企業に対する支援に分かれます。給付金や助成金など、リカレント教育に役立つ支援について知っておきましょう。

労働者の主体的な学びの支援

労働者個人に対する学びの支援には、教育訓練給付金制度や公的職業訓練があります。

教育訓練給付金

国の教育訓練給付制度とは、対象講座を受講し修了した場合に、支払った受講料の一部が教育訓練給付金として戻ってくる制度です。労働者のスキルアップを支援する制度のため、雇用保険加入期間の条件があります。

教育訓練給付金は、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類に分かれます。特に給付率が高いのが、専門実践教育訓練給付金です。資格取得後1年以内の就職で追加支給が受けられるため、最大で受講費用の70%が支給されます。年間支給額の上限は56万円で、最大で224万円がもらえます。


対象講座の例

給付率

給付額の上限

一般教育訓練

英検、簿記、ITパスポートなど

20%

10万円

特定一般教育訓練

税理士、社会保険労務士、介護初任者研修など

40%

20万円

専門実践教育訓練

看護師、美容師、歯科衛生士、介護福祉士など

50%(+20%)

年間40万円(+16万円)

出典:厚生労働省「教育訓練給付制度

高等職業訓練促進給付金

母子家庭の母、父子家庭の父の経済的自立を支援するため、厚生労働省が自治体と協力して就業を支援する制度です。看護師、介護福祉士、保育士などの資格取得のために学校へ行く場合に、原則として月10万円が支給されます。

ハロートレーニング

ハローワークで行われている公的職業訓練は、ハロートレーニングと呼ばれます。雇用保険を受給できない人も、一定の条件のもと受講手当をもらいながら教育訓練が受けられます。

キャリアコンサルティング

在職中の人は、キャリア形成サポートセンターにおいて、無料でキャリアコンサルティングが受けられます。キャリア形成サポートセンターとは、厚生労働省の委託を受けて、労働者のキャリア形成支援を行っているところです。各都道府県に拠点が設けられており、無料相談や無料セミナーが受けられます。

就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業

文部科学省では、非正規雇用の人や失業中の人を対象に「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」を行っています。この事業は、全国各地の大学で就職・転職につながるプログラムを無料で受講できるというものです。

デジタル、医療・介護、地方創生、女性活躍など幅広い分野のプログラムがあります。2~6か月程度の短期間で修了するため、速やかな就職・転職につながります。

社会人の学びを応援する「マナパス」

「マナパス」は、社会人の大学などでの学びを応援するサイトです。文部科学省の委託により運営されています。ちなみに、マナパスとは「学びのパスポート」の意味です。

大学などが実施している社会人向けの講座の検索ができるため、リカレント教育を受けたいときに役立ちます。無料のプログラムや奨学金・教育訓練給付金の対象プログラムも掲載されています。

マナパス

企業の人材育成の支援

リカレント教育を推進したい企業に対しては、助成金が支給される制度があります。

人材開発支援助成金

厚生労働省が実施している「人材開発支援助成金」は、企業の人材開発を支援する制度です。労働者へ職務に関連した知識・技能を習得させるために職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金が助成されます。

まとめ

リカレント教育とは社会人の学び直しのための教育です。社会に出てからも積極的に学んでスキルアップを目指しましょう。これからの時代は、企業側でも従業員のリカレント教育支援が必要です。経営者は、リカレント教育の定義やメリット、必要性を理解し、支援の取り組みを始めるのがおすすめです。

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