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ソーシャルキャピタルとは?企業に取り入れる重要性や効果、事例をわかりやすく説明

By 森本 由紀 |
公開日 2023.03.09

人々が関わりあって信頼関係を築いている社会では、さまざまな良い効果が生み出されます。人々のつながりという観点から近年注目されているのが「ソーシャルキャピタル」です。本記事ではソーシャルキャピタルとは何かを説明し、メリットやデメリット、企業がとり入れるべき事例について紹介します。

ソーシャルキャピタルとは?意味や定義を確認

ソーシャルキャピタルは、近年になって具体化されてきた概念です。まずは、ソーシャルキャピタルとは何か、その意味や構成要素について説明します。

日本語では「社会関係資本」

「ソーシャル(social)」とは「社会的な」、「キャピタル(capital)」とは「資本」という意味です。ソーシャルキャピタルは、日本語では一般的に「社会関係資本」と訳されます。物的資本(Physical Capital)や人的資本(Human Capital)と並ぶ、新しい概念です。

社会組織を重視する概念

ソーシャルキャピタルとは、信頼関係や人間関係、ネットワークなどを指します。「人と人との関係性やつながりによって、社会の効率性を高められる」という考え方にもとづき、社会組織の重要性を説く概念です。

社会資本との違い

ソーシャルキャピタルは「社会関係資本」と訳されますが、これとは別に「社会資本」という言葉もあります。社会資本とは、道路、鉄道、港湾、上下水道、公園などです。英語では「infrastructure」で、日本語でも「インフラ」と呼ばれています。社会資本は目に見えるハードな資本ですが、ソーシャルキャピタルは目に見えないソフトな資本です。

ロバート・パットナムによる定義

ソーシャルキャピタルと同様の概念は19世紀頃から存在しており、さまざまな形で定義されてきました。現在、一般的に認知されているのは、アメリカの政治学者ロバート・パットナムによる定義です。パットナムは1993年(平成5年)に発表した著書「Making Democracy Work」の中で、ソーシャルキャピタルを次のように説明しています。

「ソーシャルキャピタル」とは

人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴

ソーシャルキャピタルの3つの要素

パットナムはソーシャルキャピタルを信頼、規範、ネットワークの3つの要素から定義しています。それぞれについて詳しくみてみましょう。

信頼

信頼とは、ソーシャルキャピタルの本質的な構成要素です。信頼があると自発的な協力が生み出され、自発的な協力がさらなる信頼を育みます。信頼はあらゆる取引において重要な要素となり、社会の効率性とも大きく関係するものです。

規範

パットナムは規範の中でも、互酬性の規範を重視しています。互酬性とは、贈り物をされたらお返しをするといった社会的なやりとりを意味する文化人類学の用語です。互酬性は次の2つに分類されます。

均衡のとれた互酬性

同等価値のものを同時に交換

一般化された互酬性

現時点では不均衡な交換でも、将来均衡がとれるという相互期待をもとにした交換

このうち、一般化された互酬性は短期的には相手の利益のために行うものですが、長期的には自己も含めた当事者全員の利益になり得ます。利己心と連帯の調和に役立つものとして重視される要素です。

ネットワーク

ネットワークとは人々のつながりです。つながっている人々の関係性によって、次の2種類に分かれます。

種類

内容

垂直的ネットワーク

上下関係を伴うネットワーク

上司と部下

水平的ネットワーク

横並びのネットワーク

協同組合、近隣集団、スポーツクラブ

パットナムは、水平的ネットワークが密になるほど、人々は相互利益に向けて幅広く協力すると分析しています。

ソーシャルキャピタルの効果について。デメリットはある?

ソーシャルキャピタルには、社会の効率性を高める効果があります。生活面及び経済面におけるソーシャルキャピタルの効果をみてみましょう。

生活面での効果

ソーシャルキャピタルは、我々の暮らしや健康に良い影響をもたらすとされています。

健康増進

ソーシャルキャピタルは、健康増進を導きます。世界各国で、社会的なつながりの程度が高いほど平均余命も高くなるという研究結果が示されています。人間は社会的動物ともいわれますが、人とつながりを求めるのは人間の本能です。周囲の人たちとの信頼関係が築ければストレスが軽減し、健康に生きられるでしょう。

教育水準の向上

ソーシャルキャピタルを蓄積すれば、教育水準が上がります。たとえば、親が学校に関与することは、子どもの学習意欲に良い影響を与えると考えられています。多種多様な社会的つながりを設けることで、子どもの学習体験の機会も広がるでしょう。

犯罪発生率の低下

社会的なネットワークの強化により、防犯効果も得られます。ソーシャルキャピタルが蓄積されたら、困ったときに人々が助け合える社会になるでしょう。不満や不安を相談しやすい環境になれば問題が起こりにくくなり、犯罪発生率が低下します。

経済面での効果

ソーシャルキャピタルには、企業間の取引を活発にして経済成長を促進する効果もあります。

市場の効率化

ソーシャルキャピタルの蓄積には、取引コストを下げる効果があります。たとえば、製品開発を委託する場合、安価で高品質な仕事をしてくれる業者を探しやすくなるでしょう。信頼関係のあるネットワークがあれば、その都度取引先を探したり、取引先を管理したりするコストも抑えられます。ソーシャルキャピタルは、市場の効率化のために有効です。

技術革新の促進

ソーシャルキャピタルには、技術革新を促す効果もあります。たとえば、水平的ネットワークを強化して他社との協力関係を作れば、相互に良い刺激を受けられるでしょう。ソーシャルキャピタルを重視すれば、新しい技術を生み出しやすい土壌ができます。

求職活動の円滑化

ソーシャルキャピタルは、求職活動をする際にも活用できます。幅広いネットワークがあれば、休職者は自分に合った職場を見つけやすくなるでしょう。橋渡し的な役割をする人を通すことにより、就職や転職がスムーズになります。

ソーシャルキャピタルのデメリットとは

ソーシャルキャピタルは、うまく活用すればメリットがあるものです。しかし、利用の仕方によってはデメリットになることもあります。どのような点が問題なのかを確認しておきましょう。

社会階層の固定化

ソーシャルキャピタルは、社会全体に公平に蓄積するのは難しいのが現実です。組織への参加や社会的信頼の度合いは、学歴、人種、性別、収入などの社会的属性により差があります。ソーシャルキャピタルは、あるところにはたくさんありますが、ないところには全くないものなのです。ソーシャルキャピタルの蓄積の偏在は、社会階層の固定化をもたらしかねません。

悪用の可能性

ソーシャルキャピタルは、社会的・民主的な目的に利用してこそメリットがあるものです。しかし、反社会的・非民主的な目的で使われる可能性もあります。ソーシャルキャピタルが悪用されると、犯罪率が低下するどころか、逆に犯罪の温床となってしまいます。

企業におけるソーシャルキャピタルの重要性とは?

ソーシャルキャピタルの考え方を意識すれば、企業にとってメリットになることがたくさんあります。企業におけるソーシャルキャピタルの重要性と、活用する意味を確認してみましょう。

円滑にビジネスを進められる

ソーシャルキャピタルは、ビジネスの円滑化に寄与するものです。信頼関係のある取引先が増えるほど、事業を展開しやすくなるでしょう。社内で従業員同士の信頼関係が強化されると、対外的にも良い効果をもたらします。

会社のイメージアップにつながる

企業は社会的責任として、CSR活動に取り組むことが求められます。社会貢献活動を行えば、地域社会においてソーシャルキャピタルを強化できます。会社のイメージアップにつながり、優秀な人材が集まりやすくなる効果もあります。

離職率の低下

社内の人間関係が良くなれば、従業員同士が協力して成果をあげやすい環境になります。会社を離れたいと思う従業員も減るでしょう。ソーシャルキャピタル強化により、離職率の低下も期待できます。

生産性の向上

社内の人間関係が良好になれば、従業員のモチベーションが上がります。生産性の向上にもつながるでしょう。対外的なソーシャルキャピタルを強化すれば、取引コストを下げることも可能です。利益率がアップし、会社の業績が向上します。

企業がソーシャルキャピタルを強化できる事例

ソーシャルキャピタルの重要性は理解できても、どうすれば強化できるかわからないことも多いでしょう。ここからは、企業のソーシャルキャピタル強化に活用できる事例を紹介します。

ジョブローテーション

定期的に部署を異動したり、職種を変更したりする制度です。ジョブローテーションは、人事育成計画にもとづき、戦略的に行われます。従業員はさまざまな経験をしながら、幅広いスキルの習得が可能です。適性や新たな可能性を見出せることもあります。

社内の人間関係を緊密にできる

ジョブローテーションを導入すれば、従業員はさまざまな部署の人たちと仲良くなれます。社内に知り合いが増えれば、異動後もコミュニケーションがとりやすく、職務を円滑に進められるでしょう。問題が起こったときにも相談しやすい社内環境は、離職率低下にも役立ちます。

フリーアドレス制

オフィスで固定の席を決めずに、従業員が自由に席を選んで仕事ができるシステムです。リモートワークで出社しない従業員が多い場合には、スペースを有効活用できるメリットもあります。

異なる部署間のコミュニケーションに役立つ

固定された席の場合、社内の一部の人としか日常的に会話をしなくなってしまうでしょう。フリーアドレス化により、部署の垣根を越えたコミュニケーションが可能になります。新しいアイデアも生まれやすいでしょう。

メンター制度

上司とは異なる先輩が、若手社員を支援する制度です。若手社員は知識や経験のあるメンターに、仕事の悩みを相談できます。メンター制度により些細なことでも相談しやすい環境を作れば、若手社員の退職も防げます。

メンターを通じて社内人脈も広がる

若手社員はメンターと日常的に会話することで、メンターとの間に信頼関係を構築できます。メンターを通じて社内人脈も広げられるでしょう。

社内レクリエーション

社内交流会や社内イベントで、従業員が交流する機会を作れます。社内レクリエーションで相互理解が深まれば、従業員同士の信頼関係も強くなるでしょう。

普段関わりの薄い人と関わる工夫を

単なる飲み会では、社内人脈は広がりません。普段関わりの薄い人と交流できるような工夫をしましょう。

たとえば、社長との定期的な飲み会、成績上位の人だけが参加できる飲み会などが考えられます。運動会や社員旅行など、普段の業務を離れての交流も効果的です。

まとめ

人的資本、物的資本と合わせ、ソーシャルキャピタルを重視する考え方が広がっています。ソーシャルキャピタルは、企業が円滑に事業を進めるうえでも役立ちます。ソーシャルキャピタルの意味や重要性を理解したら、ここに挙げた事例を参考に、強化の取り組みを始めてみましょう。

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