ホワイトペーパーはマーケティング手法のひとつで、主にBtoB(法人向け)ビジネスで採用されています。種類や目的はさまざまあり、どのように作成するべきか迷う人は多いようです。この記事では、ホワイトペーパーを作成する際の基礎知識や活用方法について解説します。
ホワイトペーパーの意味とは?
ホワイトペーパーは、語源になった言葉とマーケティング用語で意味が異なります。以下に、2つの違いをまとめました。
ホワイトペーパーとは「白書」のこと
語源は、欧米の政府や公的機関が問題の調査や実情を報告する「白書」です。表紙が白紙(WhitePaper)であることが、名前の由来とされています。日本では、「経済財政白書」や「厚生労働白書」などの政府刊行物が有名です。
WEBマーケティングにおける定義
マーケティング用語としては、主にBtoB(法人向けビジネス)企業が顧客に向けて提供する「役立つ情報をまとめた資料」です。その有用性からホワイトペーパーの作成代行会社も存在しており、購入意思を決定する要素として活用する企業が増えています。
ホワイトペーパーと営業資料との違い
ホワイトペーパーと営業資料はともに企業が顧客に向けて発信する資料ですが、対象となる読者と内容が異なります。営業資料との違いやホワイトペーパーの目的・種類を解説します。
ホワイトペーパーは顧客視点の情報提供ツール
顧客の問題解決の手段として、自社製品・サービスが役に立つことを述べる内容が特徴です。営業資料に比べて売り込みが抑えられているため、気軽にダウンロードできる利点があります。営業資料の主な目的は、自社製品・サービスの優位性を訴求し、顧客との商談に活用することです。すでに他社や他サービスとの比較検討をしていたり、購入意思が強かったりするときは、営業資料が効果的です。
2つの違いを、以下の表にまとめました。
| 見込み顧客の獲得 | 見込み顧客の育成 | 契約・商談 | 顧客の満足度 |
ホワイトペーパー | | | | |
営業資料 | | | | |
出典:筆者作成
ホワイトペーパーの目的
一般的にホワイトペーパーは無料でダウンロードできる代わりに、個人情報を入力してもらう仕組みになっています。そのため、自社製品・サービスに対して関心の高い見込み顧客を集めることができます。
見込み顧客との信頼関係を築く
個人情報を獲得したあとは、メールマーケティングやインサイドセールスなどのアプローチをします。双方向的なコミュニケーションにより、強引な売り込みをかけることなく信頼関係の構築につなげることが可能です。
購買意欲を推測する
見込み顧客がダウンロードしたホワイトペーパーから、製品・サービスに対する関心度が図れます。購買意欲が高まるタイミングで、購入意思決定を促すことも可能です。
ブランディングになる
業界の専門用語を解説したりトレンド調査の結果を発信したりして、自社の専門性の高さや先見性を示せます。公的機関や専門家に基づくエビデンスを提示できれば、顧客の信頼感をさらに高めることが可能です。
ホワイトペーパーの種類
ホワイトペーパーは、読者の関心度合いに合致した内容であることが重要です。以下に、主な種類をまとめました。
診断・チェック用シート
読者が現状を把握したり導入前にセルフチェックしたりする、診断形式のホワイトペーパーです。結果に応じて、別の資料や自社製品・サービスの案内などにも活用できます。課題認識前の潜在顧客に有効です。
レポート・アンケート調査
自社製品・サービスに関する独自の市場調査を行い、その結果をまとめたホワイトペーパーです。業務上の課題に気づいていない、もしくは日々の業務に漠然と課題を感じている人に向けて作成されます。価値の高い調査結果を提供できれば、課題認識から導入検討段階へのステップアップも可能です。
用語集
自社製品・サービスに関する分野の専門用語を解説するホワイトペーパーです。課題を認識しており、その分野の基礎知識を得たい人からのニーズが考えられます。
製品・サービス内容の紹介
自社製品・サービスの概要や性能などを掲載したホワイトペーパーです。一緒に掲載するのに相性がよいコンテンツとして、業界のトレンドや顧客ニーズなどがあります。具体的な解決策の検討や、他社製品・サービスと比較している人が求める内容です。
導入事例
自社製品・サービスの導入事例や使い方を解説するホワイトペーパーです。実際に使用している人の意見や成功事例を提示して、活用方法を具体的にイメージしてもらう効果があります。特定の製品・サービスの情報を積極的に集めている人に必要な情報といえるでしょう。
ホワイトペーパーの書き方
効果の高いホワイトペーパーを書くためには、企画立案や構成などの事前準備が重要です。
ホワイトペーパーの企画の立て方
自社の有益性を意識しすぎると、内容を詰め込みすぎて売り込みの強い文章になる恐れがあります。最後まで興味を持って読んでもらうために、見込み顧客や目的に合わせた企画を立案しましょう。
課題と目標の設定
まず顧客が抱える課題に対して、自社製品・サービスがどのように貢献できるかを把握します。そしてホワイトペーパーで提供するコンテンツによって、見込み顧客に起こしてもらいたい行動を明確にします。
ターゲットの設定
次に、「このような人にダウンロードしてもらいたい」という理想のターゲット像を設定します。ターゲットの価値観や属性を具体的に絞り込むことで、より強く課題を意識してもらえる可能性が高まります。以下に一例をまとめました。
全体の流れを決める
全体の構成は後述する「イントロダクション」・「問題提起」・「解決策の提示」・「製品、サービス情報」・「結論」という5つのパラグラフで組み立てましょう。
強調したいコンセプトはストーリーテリング*の手法を用いると、読み手の共感や感情に訴えかけやすくなります。自社製品・サービスが開発された背景やエピソード、印象的な体験談などを物語のように表現しましょう。
*ストーリーテリング・・・伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる体験談やエピソードなどの物語を引用し、聞き手に強く印象付ける手法のこと。
ページ数を決める
最適とされるページのボリュームは、ターゲットや内容によって異なります。比較検討段階ならば10ページ以上、課題認知前の見込み顧客の場合は10ページ以内が理想です。少なすぎると顧客満足度の低下を招くため、どのような段階でも5ページ以上を目標にしましょう。
タイトルは慎重に
読み手の関心を引くために、端的に内容がわかるタイトルをつけましょう。タイトルは最初にユーザーが着目する部分のため、そこで興味を持ってもらえなければダウンロード数に大きく影響が出ます。想定したターゲットが必要としているキーワードや、具体的な数値を入れるのがポイントです。
表紙の役割
ホワイトペーパーで何を説明しているのかを伝える役割を果たします。主な構成要素を、以下にまとめました。
タイトル
ロゴ
コピーライト表記
イメージ画像
目次
ページ番号
ホワイトペーパーの基本構成
企画のコンセプトを明確にしたら、ホワイトペーパー作成の基本的な書式と構成を理解しましょう。研究論文やエッセイを作成する際に用いられる「5パラグラフ」で構成を考えるのが一般的です。
1:イントロダクション
これから読むホワイトペーパーがどのような課題を解決するのか、内容の一部や要約を提示して読者の関心を引きつけるパラグラフです。全文を読む価値がある資料であるとアピールすることが重要です。
2:問題提起
問題の呼びかけと課題発見を促すパラグラフです。読者の悩みや課題を掘り下げて、気づきや共感を起こさせます。
3:解決策の提示
課題に対する解決策を明示するパラグラフです。解決までのステップを具体的に説明すると、読者の信頼を得やすくなります。
4:製品・サービス情報
自社製品・サービスの紹介をするパラグラフです。興味段階の顧客に有用性を強くアピールしたり、比較検討段階の顧客に対しての情報が少なすぎたりしないように注意してください。
内容のボリュームは、関心の状況に応じて調整します。興味段階の読者には導入事例やメリット、実際のユーザーの声など軽く読めるものが適しているでしょう。比較検討段階に入っている読者には、製品・サービスの詳細やスペック、他社との違いなどを中心とした情報が必要です。
5:結論
全体を総括し、提示した解決策がなぜ最善なのかを述べるパラグラフです。読者によっては結論だけ読んで利用を判断する場合があるため、必要な情報を簡潔にまとめることが重要です。お問い合わせや申し込みフォームなどのCTA(行動喚起)や、会社概要・作成者情報などを設置することもあります。
ホワイトペーパー作成のポイント
ホワイトペーパーの作成・配信時に心がけたいことや注意点を、以下にまとめました。
結論は最初に明示する
ホワイトペーパーで文章の基本とされる起承転結の構成を用いると、結論を待ちきれない読者の離脱を招く原因になります。文章を書くときは、(1)結論(2)理由・説明(3)具体例・補足の順番を意識しましょう。
根拠となるデータや数字を提示する
レポート・アンケート調査・導入事例は、客観的なデータやエビデンスに基づく数字を使いましょう。数値的根拠を示すと、信ぴょう性の高い内容になります。
視覚的要素と文章のバランスをとる
文字ばかりのホワイトペーパーは読みづらく、読者の離脱を招く恐れがあります。読みやすさを考えて、画像やグラフなどの視覚的表現も取り入れましょう。
専門用語を使いすぎない
同じ業界の人がターゲットの場合は問題ありませんが、一般的な読者を対象にしている場合は専門用語を多用した文章は避けましょう。想定する読者にあわせた言葉を選ぶことが大切です。
過度の売り込みをしない
ホワイトペーパーの目的は、見込み顧客の悩み解決や課題認識です。営業資料のように、自社製品・サービスの優位性ばかりを伝えるのは本来の主旨ではありません。売り込み要素が強くなりすぎないように注意しましょう。
配信する前に入念なチェックをする
ダウンロードされたホワイトペーパーは、修正ができません。間違った情報で顧客に不利益を与えてしまうと、自社の評判や信頼に影響を及ぼす可能性があります。複数人によるチェック体制を整えてから、配信するのが理想です。
ホワイトペーパーの活用方法
完成したら、見込み顧客に認知してもらわなければなりません。主な活用方法を、以下にまとめました。
自社のWEBサイトやSNSなどで宣伝する
自社や自社製品・サービスに興味をもって訪れた人に訴求する、オーソドックスな方法です。メールマガジンなら通常配信しているコンテンツに加えて宣伝すれば、読者との関係性向上が期待できます。フォロワー数の多いSNSを運用しているなら、定期的に投稿して拡散するのもよいでしょう。費用がかからない利点はありますが、Webサイトの認知度を高める努力とダウンロードを促すための施策が必要です。
他社媒体に掲載する
掲載料を支払って、ホワイトペーパーを紹介している他社媒体へ掲載を依頼する方法です。自社に興味のない顧客層にもリーチできるため、認知度を高める効果も期待できます。ただしダウンロードした顧客の情報を得られない場合があるので、掲載の目的を明確にしておく必要があります。
セミナーで配布する
自社で開催するセミナーの参加特典で配布する方法です。セミナーを入り口として、自社製品・サービスの認知度を上げる効果が期待できます。事前アンケートを実施して参加者の課題にあわせたホワイトペーパーを準備すると、顧客満足度や信頼感をあげられるでしょう。
営業資料として活用する
営業資料に比べると訴求力は落ちますが、ホワイトペーパーは商談にも活用できます。顧客の関心度合いに合わせて複数作成しておけば、営業精度の向上に役立ちます。
まとめ
ホワイトペーパーは近年注目されているマーケティングツールで、受注率が高い見込み顧客の獲得や育成が期待できます。うまく活用するためには、どのような読者に向けて情報提供するか、目的や内容を掘り下げることが重要です。企画構成の段階からしっかりと練り上げて、営業活動に有益なホワイトペーパーを作成しましょう。