法人カードはビジネスをする上で便利なクレジットカードです。しかし、中小企業の経営者や個人事業主の中には、なかなか審査に通らず悩んでいる人もいるのではないでしょうか。今回は、法人カードの審査基準や審査に通過しやすくなるポイントについて解説していきます。
法人クレジットカード(法人カード)とは
事業でかかる経費の支払いに使えるクレジットカードを「法人クレジットカード(法人カード)」といいます。株式会社や有限会社、合同会社などの企業はもちろん、個人で事業を行っている人やフリーランスの人でも、個人用のクレジットカードとは別に事業用のカードを持つことが可能です。
ビジネスカードとコーポレートカード
法人カードは、一般的に企業の規模によって「ビジネスカード」や「コーポレートカード」に分けられます。ビジネスカードは、中小企業や個人事業主など小規模事業者向けの法人カードの呼称です。一方で、コーポレートカードは、従業員が20名を超えるような大手企業向けの法人カードの呼称です。
法人カードは社員用の追加カードを発行できる
個人カードにおいて「家族カード」が発行できるように、法人カードでもメインとなるカードに加えて、複数枚の「追加カード」を発行できます。追加カードを複数人の社員に持たせることによって、経費管理を効率化できる・ポイントが貯まりやすくなるなどのメリットがあります。
法人カード・追加カードの名義について
法人カードの名義は会社名ではなく、申し込みを行った代表者の個人名になります。
社員に追加カードを発行する場合は、実際にその追加カードを使う社員の個人名を記載することになります。
基本的にはカード名義人のみが使用できるため、社内での法人カードの使い回しや譲渡は規約違反にあたります。一般的に追加カードの発行枚数には制限があるため、上限枚数についてあらかじめ確認しておきましょう。
法人カードの審査基準
法人カードを含めて、クレジットカードの審査基準は公にされているわけではありません。チェックされるポイントとしては、会社の実績や財務状況、信用度に応じて総合的に判断されると考えられます。
会社の設立年数
長い期間にわたって活動してきた会社は、設立して間もない会社よりも社会的信用があります。このように設立年数は会社の信用に反映されるため、クレジットカードの審査項目のひとつであると考えられます。
財務状況
法人カードの審査では事業の財務状況もチェックされると考えられます。個人事業主の場合は事業規模が小さいことから、事業主個人の支払能力も重視されます。
クレジットカードの利用はカード会社から借金することに他なりません。したがって、会社の支払能力が十分にあると判断されなければ、審査に通るのは難しいでしょう。
代表者の個人信用
法人用のクレジットカードであっても、代表者個人の信用は審査に大きな影響を及ぼすと考えられます。特に個人事業主の場合、審査の対象となるのは申し込みを行う事業主本人なので、個人の信用が重視されるでしょう。
クレジットカードの使用は担保も保証もない信用取引のため、代表者や個人事業主本人の信用が低いと審査に通りにくいと考えられます。
事業用の固定電話番号の有無(個人事業主の場合)
法人カードの審査に大きく影響するといわれているのが、「事業用の固定電話番号の有無」です。カード会社によっては固定電話番号を必須としているところもあります。
特に自宅を事務所にしている個人事業主の場合、事業用の固定電話番号を持っていない人も多いかもしれません。申し込みの際は、IP電話でもいいので固定電話番号を用意しておきましょう。
屋号の有無(個人事業主の場合)
個人事業主の場合は、事業で使用する「屋号」をつけておくことをおすすめします。法人カードの審査では、屋号が入っている「開業届」や「確定申告書」があると信用につながることがあります。
法人カードの審査に通過しやすくなる3つのポイント
法人カードの審査に通過しやすくなるためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
ポイント1:安定した収入を証明する
安定した収入があることが証明できれば、法人カードの審査に通りやすくなると考えられます。
個人事業主は会社員のような給与明細がないため、審査の際に過去の収入を示す書類を提出する必要があります。一般的には確定申告書や納税証明書が収入の証明になります。会社の場合は、決算書が収入の証明書類になります。
ポイント2:個人用クレジットカードの延滞をしない
法人の業績や財務状況に加え、代表者の個人信用も審査で重要視される可能性があります。審査内容としては、個人でのクレジットカードの使用や決済状況、個人の財務状況などが挙げられます。たとえば、カード支払いの延滞があったり、多額のローンを抱えていたりした場合はマイナス評価になるかもしれません。
ポイント3:事業年数を維持する
設立年数が短いと、まだ社会的信用に乏しく、経営状態が安定していないと判断される可能性があります。反対に、ある程度の事業年数を維持することで審査に通りやすくなると考えられます。
審査に通らない場合の対処法
対処法1:審査に落ちた原因を洗い出す
審査に通らないときは、まず通過しない原因を考えることが重要です。会社や個人事業主は、常に倒産や破産のリスクにさらされています。このことから、カード会社は肩代わりした高額なお金を回収できないリスクを負うことになるため、法人カードの審査基準は個人カードに比べて高く設定されます。
審査基準の高さを踏まえたうえで、安定した収入や代表者の個人信用、設立年数などの項目に問題がないかを検討してみましょう。
対処法2:一般カードに申し込む
法人カードには一般カード、ゴールドカード、プラチナカードなどのランクがあります。プラチナカードは最も審査基準が厳しく、事業の実績や高い信用がなければ発行されません。ゴールドカードも同様にある程度の信用が求められます。一般カードの場合は、相対的ではありますが審査基準が緩和されます。
一般カードで決済を継続して信用を得れば、上位ランクのカードに切り替えられることもあります。
対処法3:他のカード会社に申し込む
なぜ審査に落ちたのか心当たりがない、理由がわからないという場合は、他のカード会社への申し込みを検討しましょう。法人カードの審査基準はカード会社によってさまざまです。1社の審査に落ちたとしても、他のカード会社なら審査に通る可能性があります。
法人カードの申し込みの流れや必要書類について
法人カードを申し込む方法
法人カードの申し込みは、インターネットを通じたオンライン申込が多くなっています。申込フォームに必要な情報を入力し、電話での本人確認や必要書類の送付を行います。その後入会審査が行われ、審査通過後にカードが発行されます。申し込みから発送までの期間は、おおよそ2~3週間となっています。
法人カード取得のための必要書類
法人カードを申し込む際には、以下の書類が必要になります。
(1)6ヵ月以内に発行された登記簿謄本
登記簿謄本は正式名称を「全部事項証明書」といい、会社が実在することを証明する重要な書類です。本店所在地を管轄する法務局で、1通600円で取得することができます。個人事業主の場合は開業届を準備しましょう。
(2)代表者の本人確認書類のコピー
本人確認書類として、運転免許証やパスポート、住基カードなどのコピーを提出します。
(3)引き落とし先の銀行口座
企業の場合は法人名義の口座、個人事業主は個人名義の事業用口座を事前に準備しましょう。それらの口座番号がわかる部分のコピーが提出書類として必要になります。
(4)収入証明書
カード会社にもよりますが、申し込みの際に収入証明書の提出を求められるケースがあります。その場合には、決算書や確定申告書のコピーを提出しましょう。
まとめ
今回は、法人カードの審査基準や審査に通りやすくなるポイントについて解説しました。法人カードの審査基準には、会社や個人の信用が大きく関わると考えられます。なかなか審査に通らない場合は、まずは経営を安定化させて軌道に乗せ、徐々に信用を積み重ねていきましょう。
公認会計士、税理士、CFP
大手監査法人に勤務した後、会計コンサルティング会社を経て、税理士として独立。中小企業、個人事業主を会計、税務の面から支援している。独立後8年間の実績は、法人税申告実績約300件、個人所得税申告実績約600件、相続税申告実績約50件。