
事業者の業務効率化を支援する国の施策のひとつに「IT導入補助金」があります。
ITツールの導入を支援する制度で、これまで複数年にわたり公募を実施してきました。
さらに、令和6年(2024年)12月の令和6年度(2024年度)補正予算成立に伴い、今後の継続も決まっています。
そこでこの記事では、IT導入補助金2025で実施予定の拡充ポイントを交えて制度概要を解説します。
※記事内容は、2025年2月3日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
IT導入補助金2025とは
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
2025事業では、最低賃⾦引き上げへの対応促進に向けて最低賃⾦近傍の事業者の補助率を引き上げることをはじめ、過去の公募内容から複数の拡充を予定しています。
参照:IT導入補助金2025 チラシ
IT導入補助金2025以降の拡充ポイント
「IT導入補助金2025」の概要

参照:中小企業庁 サービス等⽣産性向上IT導⼊⽀援事業 『IT導⼊補助⾦2025』の概要
IT導入補助金2025では、過去の公募同様、以下の申請枠・申請類型で公募を行います。

ただし、これら申請枠・申請類型において、大きく4つの変更を予定しています。
1:補助対象経費の拡充
通常枠・複数社連携IT導入枠・インボイス枠(インボイス対応類型)の補助対象経費に関し、これまでのソフトウェア購入費やクラウド利用料(最大2年分)、保守サポートやマニュアル作成の費用のほか、導入後のIT活用定着を促す支援にかかる費用も補助対象となります。
また、通常枠において、対象経費となる単独申請可能なツールの拡⼤も予定しています。
2:最低賃金近傍の事業者の補助率引上げ
最低賃金近傍の事業者とは、3か月以上の間、地域別最低賃金と比較してプラス50円以内で雇用している従業員数が、全従業員数の30%以上であることを示した事業者を指します。
最低賃⾦引き上げへの対応促進に向けて、申請事業者が最低賃金近傍の事業者に該当する場合、通常枠において補助率を1/2から2/3に引き上げます。
一方、該当しない場合の補助率は、1/2となります。
3:補助上限額を引き上げ
セキュリティ対策⽀援を強化するため、セキュリティ対策推進枠において、補助上限額をこれまでの100万円から150万円に引き上げます。
4:小規模事業者の補助率の拡充
セキュリティ対策推進枠において、小規模事業者に該当する場合の補助率をこれまでの1/2から 2/3に引き上げます。ただし、該当しない場合は、これまで同様に1/2となります。
参照:中小企業庁サービス等⽣産性向上IT導⼊⽀援事業『IT導⼊補助⾦2025』の概要
各申請枠の補助額・補助率
各申請枠の補助額・補助率は、次のとおりです。
通常枠
ITツールの業務プロセスが1〜3つまで:補助額5万円〜150万円未満(補助率1/2以内)
ITツールの業務プロセスが4つ以上:補助額150万円〜450万円以下(補助率1/2以内)
※3か⽉以上地域別最低賃⾦+50円以内で雇⽤している従業員が全従業員の30%以上であることを⽰した場合は補助率2/3以内。
※ITツールの業務領域が4つ以上の場合は、事業計画期間において、給与⽀給総額を年平均成⻑率1.5%以上増加させ、 事業場内最低賃⾦を地域別最低賃⾦+30円以上の⽔準にする賃⾦引上げ計画を策定し、従業員に表明していることが必要。
複数社連携IT導⼊枠
補助上限額:
(1)と(2)をあわせて3,000万円、(3)は200万円
補助率 :
(1)基盤導⼊経費:1/2〜3/4、4/5(インボイス枠インボイス対応類型と同様)
(2)消費動向等分析経費:2/3以内
(3)事務費、専⾨家費:2/3以内
インボイス枠(インボイス対応類型)
ITツール︓補助額50万円以下の部分は(補助率3/4以内、⼩規模事業者は4/5以内)
50万円超〜350万円の部分は(補助率2/3以内) ⇒導⼊するITツールが「会計」・「受発注」・「決済」の機能を2機能以上有する場合は、補助額350万円以下の申請が可能。 (1機能の場合は、補助額50万円以下の申請が可能。)
PC・タブレット等︓補助額10万円まで(補助率1/2以内)、レジ・券売機等︓補助額20万円まで(補助率1/2以内)
インボイス枠(電⼦取引類型)
補助額:350万円以下
補助率:中⼩企業・⼩規模事業者等が申請する場合:2/3以内
⼤企業等が申請する場合:1/2以内
セキュリティ対策推進枠
補助額:5万円〜150万円以下
補助率:中⼩企業が申請する場合:1/2以内
⼩規模事業者が申請する場合︓2/3以内
公募スケジュール
令和7年(2025年)1月末時点で公表されているIT導入補助金2025の公募スケジュールは、以下のとおりです。
第1次交付申請受付開始⽇:令和7年(2025年)3⽉31⽇(予定)
第1次交付申請締切⽇:
・通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型、電⼦取引類型)、セキュリティ対策推進枠:令和7年(2025年)5⽉12⽇(予定)
・複数社連携IT導⼊枠:令和7年(2025年)6月16⽇(予定)
参照:IT導入補助金2025 チラシ
過去採択事例
ここでは、IT導入補助金の過去公募における採択事例を紹介します。
IT導入補助金を活用したECサイト構築で、新たな収入源を創出
本社所在地:福岡県春日市
県内で業務用食品や厨房機器の卸販売、飲食店経営のサポートなどをメインに手がけている企業において、新型コロナウイルス感染症の拡大によって業績が悪化、売上は半分まで落ち込みました。
そこでIT導入補助金を活用してECサイトを構築し、自社の大きな強みであるスーパーでは入手できない製菓・製パン用食材や機能性食品などの製品群を一般消費者に販売することとしました。
その結果、1年で月商400万円を達成しましたが、今後さらなる売上アップを目指しています。
※IT導入補助金2020 特別枠 C類型で採択を受けた事例です。
参照:独立行政法人中小企業基盤整備機構 IT導入補助金 活用事例
まとめ
この記事では、IT導入補助金2025で実施予定の拡充ポイントを交えて制度概要を解説します。DXや業務効率化をご検討中の場合は、ぜひ、本補助金を活用したITツール導入をお考え下さい。
中央大学商学部・グロービス経営大学院卒業(MBA) / 公認会計士及び経営革新等支援機関デロイト トウシュ トーマツ出身。監査法人、飲食チェーンの経営企画、人材大手の社内ベンチャーの事業推進・営業企画を経て、株式会社Staywayに参画。Staywayでは、事業開発、営業、カスタマーサクセス、補助金申請支援に従事。
※本記事の監修者です。