
令和7年度の最低賃金引上げにより、全国的に人件費の負担が増加しています。特に中小企業や小規模事業者にとっては、賃上げへの対応が経営上の大きな課題となっています。
こうした状況を受け、国や自治体では、最低賃金の引上げに伴う事業者の負担を軽減するため、各種支援策を打ち出しています。
この記事では、最低賃金引上げに対応するための国の主な支援策に加え、福岡県独自の支援制度について解説します。
※記事内容は、令和7年11月7日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
令和7年度の最低賃金引上げについて
令和7年10月1日から、全国の地域別最低賃金が順次改定されています。
労働者数を加味して算出される「全国加重平均」は1,121円(引上げ率:6.3%)となり、過去にない高水準となりました。
福岡県では、令和7年11月16日から最低賃金が992円から65円引上げられ、1,057円となります。
こうした中、政府は、最低賃金の引上げによる影響を受ける事業者を支援するため、補助金の要件緩和をはじめさまざまな支援策を公表・実施しています。
参照:経済産業省 最低賃金引上げに対応する中小企業・小規模事業者への支援策を公表します
参照:厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
最低賃金引上げに伴う政府の支援策
政府が最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者に対するさまざまな支援策を公表・実施するなか、内閣官房は令和7年9月5日、当面の措置として、以下の助成金および補助金について、対象の拡大、要件緩和等の措置を講じることを公表しました。
1. 業務改善助成金(厚生労働省)
2. ものづくり補助金(経済産業省)
3. IT導入補助金(経済産業省)
4. 中小企業省力化投資補助金(一般型)(経済産業省)
具体的には、業務改善助成金では、以下2点の変更をもって支援を行います。
1. 申請可能な事業所の拡大
2. 申請手続きの簡略化
また、ものづくり補助金・IT導入補助金・中小企業省力化投資補助金(一般型)では、以下2点の支援を行います。
1. 補助率引上げ特例の要件緩和
2. 中央最賃審の目安以上に賃上げを行う中小企業の優先採択
業務改善助成金における支援
業務改善助成金では、令和7年9月5日から対象の拡大、要件緩和を行っています。
申請可能な事業所の拡大

出典:内閣官房「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」 の一環としての最低賃金の引上げに関する支援の拡充
従前は事業場内最低賃金から地域別最低賃金50円以内の事業所が助成対象であったところを「改定後の地域別最低賃金未満」までの事業所が対象となります。
申請手続きの簡略化

出典:「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」 の一環としての最低賃金の引上げに関する支援の拡充
従前は、賃金引上げ計画の事前提出・審査を必要としていました。
これを簡略化し、令和7年度当該地域の最低賃金改定日の前日までに賃金引上げを実施していれば、賃上げ計画の事前提出が不要となります。
ただし、同期間以外の賃金引上げは一切対象となりませんのでご注意下さい。
参照:厚生労働省 9月5日から、事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業等を支援する「業務改善助成金」を拡充します
ものづくり補助金・IT導入補助金・中小企業省力化投資補助金(一般型)における支援
ものづくり補助金・IT導入補助金・中小企業省力化投資補助金(一般型)においては、要件緩和、要件に該当する企業の優先採択を行います。
補助率引上げ特例の要件緩和

出典:「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」 の一環としての最低賃金の引上げに関する支援の拡充
従前、「最低賃金引上げ特例」として、以下の要件を満たす場合は各補助金の補助率を1/2から2/3に引上げていました。
・改定前の地域別最賃+50円以下の賃金で雇用している従業員(3か月以上)が、全従業員の30%以上
この要件を緩和し、以下の要件を満たす場合、補助金の補助率を1/2から2/3に引上げます。
・改定後の地域別最賃未満の賃金で雇用している従業員(3か月以上)が、全従業員の30%以上
中央最賃審の目安以上に賃上げを行う中小企業の優先採択

出典:「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」 の一環としての最低賃金の引上げに関する支援の拡充
以下の要件に該当する事業者に対して、それぞれ加点を行う措置を新たに導入し、それらの事業者の優先採択を行います。
1. 改定後の地域別最賃未満で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いる事業者
2. 中央最賃審の目安以上に事業場内の最低賃金を引上げる事業者
参照:「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」 の一環としての最低賃金の引上げに関する支援の拡充
福岡県独自の支援策
最低賃金の引上げに伴う事業者の負担を軽減する支援策として、国の助成金や補助金のほか、福岡県でも支援策を設けています。
中小企業IT導入・賃上げ緊急支援補助金
国のIT導入補助金の活用により業務の効率化を図り、賃上げに取り組む中小企業に対し、国の補助率をかさ上げし、事業者負担をさらに軽減する制度です。
補助対象者 | 国のIT導入補助金2025(通常枠)に採択された県内中小企業者・小規模事業者のうち、補助率2/3の対象となる事業者 (=3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員数が全従業員数の30%以上である事業者) |
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補助対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(ソフトウェアのみ) |
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補助率 | 1/12(国の補助率2/3と合わせ、補助率3/4に嵩上げ) |
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補助上限額 | 56万2,500円(国 450万円) |
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公募期間 | 令和8年1月19日(月)まで 国のIT導入補助金の第7次締切分は、令和8年1月20日に交付決定予定です。 福岡県の申請締切日は令和8年1月19日で、国の交付決定日より前のため、県への申請はできません。 そのため、本補助金への申請は「国のIT導入補助金 第6次締切分」までが対象となります。 |
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参照:福岡県 福岡県中小企業IT導入・賃上げ緊急支援補助金事務局専用サイト
福岡県北九州市 生産性向上・賃金引上げ応援補助金
市内の中小企業の生産性向上と最低賃金引上げを応援するための「上乗せ補助金制度」で、厚生労働省の業務改善助成金とともに活用可能な制度です。
助成対象 | ・北九州市内にある事業場 ・令和7年4月1日以降に福岡労働局から交付決定の通知を受け、 令和8年2月28日までに交付額確定通知を受けている事業場 |
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補助対象経費 | 業務改善に要する設備投資等にかかる費用 |
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補助率 | 業務改善に要する設備投資等にかかる補助対象経費の最大10分の2 |
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補助上限額 | 業務改善助成金の助成上限額の10分の2 |
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公募期間 | 令和7年4月1日(火)から令和8年3月6日(金)必着 |
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参照:福岡県北九州市 生産性向上・賃金引上げ応援補助金
まとめ
この記事では、最低賃金引上げに対応するための国の主な支援策に加えて、福岡県独自の支援制度について解説しました。
要件緩和等により、当該助成金や補助金の活用がしやすくなっていますので、最低賃金引上げによる影響を受けている事業者様はぜひ、活用をご検討ください。
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中央大学商学部・グロービス経営大学院卒業(MBA) / 公認会計士及び経営革新等支援機関デロイト トウシュ トーマツ出身。監査法人、飲食チェーンの経営企画、人材大手の社内ベンチャーの事業推進・営業企画を経て、株式会社Staywayに参画。Staywayでは、事業開発、営業、カスタマーサクセス、補助金申請支援に従事。
※本記事の監修者です。