
プロ人材が持つ経験やノウハウを活用することで地方の中堅・中小企業の成長を促し、地方創生につながります。プロ人材の定義と、地方企業が抱える経営課題・求人ニーズに応える内閣府プロフェッショナル人材事業について解説します。
プロ人材の定義とは?
企業にとって、優秀な人材を確保することは経営において非常に大切な要素のひとつです。その中でも近年、地方企業におけるプロフェッショナル人材(プロ人材)へのニーズが高まっています。

プロ人材とは
地域の中堅・中小企業の経営戦略を具現化し、企業の成長を担う人材を指します。経営者の右腕としての活躍が期待される存在ですが、具体的な年齢や経験値は定義されていません。地域企業の新規サービス・商品開発や販路開拓、生産性向上などのニーズにマッチする人材を「プロ人材」と定義しています。
内閣府では、プロ人材の想定される人物像として次の例を挙げています。
経営人材・経営サポート人材
経営者を支える右腕として、企業マネジメントに携わる人材です。将来の経営幹部候補も含みます。
例)企業経営、大手企業でのマネジメント経験者など
新事業立ち上げ・販路開拓人材
新規事業や海外現地事業の立ち上げなど、企業にとって新たな事業分野や販路を開拓し、売上増加などの効果を生み出す人材です。
例)商社等での営業・新規事業立ち上げの経験者、グローバルビジネスのマネジメント経験者など
生産性向上人材
開発や生産などの現場で新たな価値(新たな製品開発、生産工程の見直しなど)を生み出せる人材です。
例)大手企業の工場長等の経験者、開発リーダー等の経験がある技術者など
出典:内閣府「プロフェッショナル人材戦略ポータルサイト」
内閣府プロフェッショナル人材事業とは
都市部に集中しがちな人材リソースを地方につなげて人と仕事の好循環を創出すべく、内閣府ではプロフェッショナル人材事業に力を入れています。全国各地に拠点を設け、各地域の関係機関と連携しながら企業経営をサポートしています。
事業の概要
プロフェッショナル人材事業は、地方の中堅・中小企業のよりよい発展を目指すために創設されました。成長のための一手を打つプロ人材の必要性は感じているものの、具体的な行動に移せていない地方企業を支援します。企業の成長性と経営課題について考え、解決に向けたプロ人材の発掘から採用、アフターフォローまで総合的なサポートを受けられます。
この事業は2016年(平成28年)初旬ごろから本格的にスタートし、当初は国から地方自治体への委託事業として行われていました。その後は国から自治体へ支払われる交付金をもとに、それぞれの自治体で予算が組まれています。
事業の4ステップ
内閣府ではプロフェッショナル人材事業の提供体制について、次の4ステップを挙げています。
- 企業の潜在的な成長力についての気づきを促進し、「攻めの経営」への転換を促す
- 企業の成長戦略を実現可能にするプロ人材について、ニーズを具体化する
- 人材ビジネス事業者や各種関係機関などと連携し、プロ人材と企業とのマッチングを図る
- プロ人材の採用後も定期的なフォローアップを行い、活躍と企業の成長をサポートする
出典:内閣府「プロフェッショナル人材事業パンフレット」
これらの段階を経ることで経営ニーズをより明確にでき、企業とプロ人材とのマッチングがよりよいものになります。プロ人材が持つスキルを最大限発揮できれば、地方企業のさらなる経営力向上を図れます。
地方企業にプロ人材が必要?

実際にプロ人材を採用した地方企業からは、「自社の力だけではなし得なかった事業展開を目指すきっかけを掴めた」という声が聞かれます。
地方創生には攻めの経営が必要不可欠
地方企業の成長と地域経済の活性化は、切っても切り離せない関係です。現在、地方の過疎化や人手不足の状況は、年々深刻化しています。地域の中小企業が持つアイディアや技術力を活かし、次世代につなげることは地域の人とお金の好循環に結びつきます。地方企業の「攻めの経営」こそ、今後の日本を支えていく鍵となるのです。
「新たな視点」が中小企業の未来をつくる
プロ人材の採用は、地方企業にとって大きなメリットがあります。自社の人材だけでは解決できなかった課題も、外部の視点を取り入れることでスムーズな流れを生み出せるようになります。また、プロ人材が持つ経験や知識を自社のメンバーと共有すれば、よりよい経営体制を築くことも可能です。
都市部大企業との人材交流による効果
プロフェッショナル人材事業では、都市部にある大企業との人材交流も手掛けています。拠点とパートナーシップを結んでいる大手企業から出向や研修、副業・兼業などの形態でプロ人材の受け入れが可能です。プロ人材の経験やノウハウを自社の経営に活かし、地方創生につなげられます。
プロフェッショナル人材戦略拠点について

内閣府のプロ人材事業は、各地域に設置された拠点にて行われています。経営の見直しからプロ人材の選出・採用、その後のフォローに至るまで、充実したサポート体制があるのが特徴です。
プロフェッショナル人材戦略拠点の設置場所
プロフェッショナル人材戦略拠点は現在、東京都と沖縄県を除く全国45の道府県に設置されています。各拠点の場所やマネージャーは、内閣府のポータルサイトでも確認できます。
出典:内閣府「プロフェッショナル人材戦略ポータルサイト(拠点・マネージャー紹介)」
プロ人材採用までの流れ
プロフェッショナル人材戦略拠点では、主に下記の流れでプロ人材の選出・採用を行っています。
課題・ニーズを明確にする
拠点の担当者との打ち合わせを行い、経営や人材に関する課題とニーズを明確化します。
民間人材ビジネス事業者等との連携
拠点から民間の人材ビジネス事業者などへ求人ニーズを通知し、プロ人材の候補者を選出します。
プロ人材の選考・採用
候補者の中から、企業のニーズにマッチするプロ人材を選考・採用します。
プロ人材戦略拠点のサポート体制
各拠点には金融機関や役所、公的機関などでの経験を持つプロフェッショナル人材戦略マネージャーが在籍しています。マネージャーやスタッフは経営者から丁寧にヒアリングを行い、地域の金融機関や民間の人材ビジネス事業者などと連携しながら今後の経営について考えていきます。そこから人材ニーズを掘り起こし、プロ人材と企業の橋渡しをするのです。
無料で相談できる
経営の課題や求人ニーズの明確化など、プロフェッショナル人材戦略拠点に相談する際の費用は一切かかりません。一方、プロ人材の紹介・採用を行う際に民間人材ビジネス事業者を介した場合には、その事業者への支払いが発生することがあります。
様々な事例に触れられる
拠点に相談することにより、多彩なプロ人材の活用事例に触れられます。それにより自社ではなかなか得られなかった課題解決策を見つけられたり、新たなつながりを得られたりといったメリットが多くあります。
各種イベントが開催される
セミナーやシンポジウムなど、プロ人材の採用・活用についての情報を得られるイベントも開催されています。個別相談の前段階として、役立つ情報が得られるよい機会となります。
まとめ
地方経済の発展や中堅・中小企業の経営改善は、今後の日本においてより一層求められるようになるテーマです。地方企業ならではの発想や資源、技術力の活用と承継を考えたとき、プロ人材の雇用を通じた「攻めの経営」への転換は有効な手段といえるでしょう。
西日本シティ銀行では、求人ニーズについても相談を承っております。人材不足にお困りの事業主の皆さま、詳しくは各営業店、またはNCBリサーチ&コンサルティングに気軽に問い合わせください。
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大手証券会社、銀行の個人営業職を経験した後、26歳で独立系ファイナンシャルプランナーとして独立。個人を対象にした相談業務やセミナー・講演会の講師業、各種メディア出演を通じてライフプランやマネープランに関する情報提供を行ってきた。現在はFPの知識を活かした執筆活動を中心に活動している。