インタビュー

現場の改善アイデアを、AIで資産に変える|株式会社ゲンテイ 元堤晴香さん

By 佐々木 恵美 |
公開日 2026.03.17
株式会社ゲンテイのインタビュー記事KV

株式会社ゲンテイは、製造業向け改善提案書作成AIアプリ「KaizenEX(カイゼンエクスプレス)」を提供するスタートアップです。

代表の元堤晴香さんは、全国の製造現場を10年に渡ってサポートしてきた経験と、外資系IT企業でのコンサルティング知識をもとに、2024年11月に福岡で株式会社ゲンテイを設立しました。日本の「改善文化」を国内外に広めたいという元堤さんに、創業までの道のりから今後の展望まで聞きました。

株式会社ゲンテイ 代表取締役 元堤晴香(もとづつみ はるか)さん

機械・ロボット系専門商社にて営業技術職として10年間、全国の製造現場を支援。セールスフォース・ジャパンにて企業向け営業担当を経て、2024年11月に株式会社ゲンテイを創業。「ものづくりを、もっと自由に」をビジョンに、製造現場で長年埋もれてきた叡智をAIと共創し、日本のものづくりの競争力向上に貢献する。

「女社長になる」ー幼い頃から抱いた起業への夢

――元堤さんが起業するまでの経緯を教えてください。

元堤:自営業をしていた祖父母の影響を受けて、幼い頃から自分でビジネスをしたいという思いがありました。中学校の卒業文集には「女社長になりたい」と書き、大学は経営学科に進学。特に興味があったのは、ものづくりの分野です。私は大阪出身で、東大阪には世界に名だたる部品製造業が集積しているので、ものづくりに興味がある大学生が集まって、製造業の社長にインタビューをして記事を書き、自分たちで作ったホームページに載せるという活動をしていました。

――子どもの頃から明確な目標があったのですね。

元堤:そうですね。大学卒業後は商売の基本である仕入れ・粗利・売上・流通・交渉といった商売事を肌で学びたいと思い、機械・ロボット系専門商社に就職。10年間で大阪、静岡、名古屋、熊本と転勤し、営業技術職として各地の製造現場を支援しました。その後、FA*現場で設備から収集したデータを分析・活用するCRM**やMA***、BIツール****に興味を持ち、セールスフォース・ジャパンへ転職。福岡オフィスにて企業向け営業担当として、営業支援システムの提案に約3年間従事しました。

*FA=Factory Automation(ファクトリー・オートメーション)の略。工場の作業を機械やコンピューターで自動化すること。
**Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の略。顧客との関係を管理・強化するための仕組みや戦略のこと。
***Marketing Automation(マーケティング・オートメーション)の略。マーケティング活動を自動化・効率化する仕組みやツールのこと。
****Business Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)ツール。企業のデータを分析・可視化して、経営やビジネスの意思決定を助けるソフトウェア。

プログラミングスクールでの経験が起業の原点に

――起業に向けて、着々と行動されてきたという印象を受けました。

▲代表取締役の元堤晴香さん

元堤:2023年にIT企業を退職後は、福岡にあるプログラミングスクールに1年ほど通いました。仕事は営業がメインだったので、ものを作るときのエンジニアリングに関する知見を少しでも身につけたかったからです。結果として、スクールでの経験が起業につながりました。

――起業するならコレ、という具体的なものはなかったのでしょうか。

元堤:その通りで、これをやりたいと起業したわけではなく、商売をしてみたいという思いが強かったのです。スクールでは私が描いた構想をベースに、一緒に学んでいた東京のエンジニアさんたちとチームを組んでアプリケーションを開発しました。長年現場で蓄積してきた課題感をプロダクトとして形にできたことは、とても充実した時間になりました。一緒に開発したメンバーの了承を得て、そのアプリをもとに2024年11月に起業しました。

改善提案が「形骸化」していませんか?ーKaizenEX誕生の背景

――どんなアプリで起業されたのか教えてください。

元堤:製造現場で長年運用されてきた改善提案書を、AIとともに共創できるアプリ「KaizenEX(カイゼンエクスプレス)」です。多くの現場では改善提案の仕組みはあるものの、業務に逼迫(ひっぱく)されて記入するタイミングが取れなかったり、運用が形骸化していたり資料の体裁づくりが目的化して本来の現場改善から外れてしまうケースが少なくありません。また、技術者には言語化が得意でない方も多く、商社時代に私が代わりに提案書作成をサポートしたこともあります。KaizenEXはコメントを追記するだけでAIが言語化をサポートし、現場の叡智を組織の資産として蓄積できるプラットフォームです。

――元堤さんの経験や気づきがベースになったプロダクトですね。

元堤:今までさまざまな製造現場をサポートしてきた中で培った知見と、外資系IT企業で学んだ再現性のある営業プロセスの仕組み化の経験が、私の強みになっています。特に商社時代は、技術者の方々が言葉にしづらい課題や想いを引き出し、提案書として形にする「通訳者」のような役割を担ってきました。一般的なコンサルティングは提案で終わることも多いですが、私はKaizenEXを通じて、提案が承認された後の実行フェーズまで伴走できる仕組みを築いていきたいと考えています。

これまで技術者の方が地道に努力を重ねる姿を間近で見てきたので、その想いを大切にしたいという気持ちが強くあります。新規設備導入プロジェクトで設備やロボットシステムが安定稼働した瞬間の喜びは何にも代えられないほど大きく、1案件ごとにドラマがあり、毎回深く感動しました。だからこそ、製造の現場に本当に役立つものを届け続けたいと思っています。

スタートアップの支援と利便性に魅かれて福岡で起業

――福岡で起業された理由を教えてください。

元堤:仕事の縁で福岡に来たため、当初は知り合いもほとんどいませんでした。それでも福岡を選んだ理由のひとつは、⽴地と交通アクセスの良さです。空港が市街地に近く、国内外への移動がしやすい。九州各地の製造現場にも⾜を運びやすく、東京や⼤阪にも⽇帰りで動ける点が気に⼊っています。東京での起業も検討しましたが、過密な環境は⾃分に合わないと感じ、今は⽉2 回ほどの出張で⼗分対応できています。⼤阪に戻ると慣れ親しんだ環境に⽢えてしまいそうで、あえて縁もゆかりもない⼟地で⾃分を試したいという気持ちもありました。

また、福岡はスタートアップ⽀援のエコシステムが充実しており、⾏政・⺠間両⾯からのサポートが⼿厚い点も⼤きな決め⼿でした。エンジニアカフェのセミナーへの参加やFukuoka Growth Next への相談を重ね、福岡市の特定創業⽀援等事業のサポートのもとで創業しました。2024年12 ⽉には「Engineer FriendlyCity Fukuoka AWARD 2024」のプロダクト開発部⾨で受賞することができました。

――現在はどのようなことをしているのでしょうか。

元堤:現在はKaizenEX のPMF(プロダクトマーケットフィット)に向けて、プロダクトのブラッシュアップを進めているところです。実証実験を⼀緒に伴⾛してくれるパートナー企業を探している段階で、ご関⼼のある⽅はぜひお声がけいただけると嬉しいです。

KaizenEX は、⾳声でコメントを⼊⼒すると、提案書のフォーマットに則したアイデアをAI が共に作成してくれる仕様です。改善提案書・⽇報・議事録などのドキュメントから現場の叡智を抽出・整理し、組織内の誰もが学習・再利⽤できるプラットフォームとして、ベテラン社員の暗黙知や過去の改善事例を蓄積することで、属⼈化を防ぎながら継続的な改善サイクルの実現を⽬指しています。

「ものづくりを、もっと自由に」ー現場の叡智を世界へ

――「ゲンテイ」という社名の由来を聞かせてください。

元堤:私の姓である「元堤」を音読みしたものです。

――確かにそうですね、気づきませんでした。子どもの頃から憧れていた社長になってみて、いかがですか。

元堤:会社員時代は与えられた⽅針や製品を推進していく役割でしたが、起業してからはあらゆることを⾃分で判断・決断する連続で、毎⽇が学びの場になっています。意思決定においては、先輩起業家の知⾒や経営者の著書を参考にしながら、⾃分⾃⾝で腹落ちしてから動くことを⼤切にしています。また、バックオフィス業務はAI エージェントをフル活⽤して運営しており、少数精鋭でも機動⼒⾼く事業を推進できる体制を整えています。⾃分のビジョンに責任を持ち、全てを動かしていける点に、起業の醍醐味を感じています。

――製造業はまだ女性が少ない業界です。

元堤:その通りです。製造業の総合職では、職場に⼥性が1〜2 名しかいないという環境を何度も経験してきました。⼥性をはじめ、誰もが製造業に積極的に参画できる環境を整えるサポートがしたいと思っています。KaizenEX で改善プロセスを可視化することで、経験や⽴場に関わらず誰もがものづくりの現場でチャンスを掴めるーそんな環境づくりの一助になれればと考えています。

――今後の展望についてお聞かせください。

元堤:現場の叡智を組織全体で循環させ、経営資産として活⽤できるインフラを築いていきたいと考えています。KaizenEX には改善提案の⾒える化機能や、従業員・管理職がリアクションやコメントで応答できる仕組みがあり、社内コミュニケーションの活性化や経営判断の質向上にも貢献できると考えています。そして、⽇本の製造業が⻑年培ってきたカイゼン⽂化は、世界から⾒ても極めて価値の⾼い知的資産です。「ものづくりを、もっと⾃由に」というビジョンのもと、KaizenEX を通じてその⽂化を世界の製造現場へ届けていきたいと思っています。

株式会社ゲンテイについて

■会社概要

会社名:株式会社ゲンテイ
所在地:福岡市中央区天神1-10-20 天神ビジネスセンター6F
設立:2024年11月
代表取締役:元堤 晴香

■事業内容

改善提案書作成AI アプリ「KaizenEX」の開発・提供/AI導⼊⽀援/営業⽀援

■問い合わせ先

電話:092-687-5734
メール:hmotozutsumi☆gen-tei.com (☆を@に変更してアドレス記載)
URL:現在作成中

お知らせ

Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

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[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
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北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
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