だしと見た目のインパクトにこだわるたこ焼きで起業|nancle 小林俊貴さん

コロナ禍まっただ中の2021年10月、福岡・大名でオープンした、たこ焼き屋「nancle(なんくる)」。代表の小林俊貴さんは25歳で機械整備の仕事を辞めた後、わずか2か月でこの店を立ち上げました。最初は苦戦したものの、今では行列のできる店になり、次なる展開も見据えています。「勢いに任せて起業したけれど、今は充実していてとても楽しい」と笑顔で話す小林さんに、自営業に憧れたきっかけや起業のリアルなストーリーを聞かせてもらいました。
nancle 代表取締役 小林俊貴(こばやし としき)さん
福岡県久留米市生まれ。久留米高等専門学校に進学後、自動車関連の仕事に従事。その後、八女市で祖父が営む機械整備の会社に入り、3年間勤務。起業を志して退職し、2021年10月にたこ焼き屋「nancle」をオープン。
目次
自営で働く祖父に憧れ、好きな飲食業で起業を決意
――小林さんは25歳で起業されたとのこと。もともと起業したいと思われていたのですか?
振り返ると、子どもの頃から自営業への思いがありました。私は久留米出身で、幼い頃から八女に住む祖父母のところによく行っていました。祖父は八女茶に関わる機械の整備や販売の会社を営んでいて、筋肉質なガッチリした身体で朝から夜まで働く姿がすごくカッコよくて、自分も祖父のように働きたいと憧れました。
――それから起業までの道のりを教えてください。
中学生の頃に「どうやったらお金持ちになれますか」と先生に聞くと、「勉強したらなれる」と言われたので、勉強を頑張って高専に進学。その後自動車整備の仕事を経て、22歳から祖父のもとで働きました。祖父は80歳を過ぎても仕事に情熱を注いでいて、好きだから頑張れるのだろうし、そういうものにめぐり合えたこともすごいと思っていました。

ただ、自分は機械の仕事が好きで楽しかったものの、これが本当にやりたいことなのか分からなくなって。ちょうどコロナ禍で人生を見つめ直し、祖父の入院によって跡を継ぐか決断する岐路に立ち、悩んだ末に別の道に行くことにしました。2021年8月末、25歳のときでした。
――具体的にやってみたいことがあったのでしょうか?
特になくて、まず自分の人生のモットーを考え、「挑戦すること」「人を喜ばせること」「日本のものを継承すること」の3つにしました。それから東京や大阪の街を歩いて回り、やりたいことを探しました。そして浮かんだのが飲食業でした。高専の頃、居酒屋で5年間のアルバイト経験があり、いろいろな人が集まる飲食店に魅力を感じたことと、アルバイトで団体客を任されたことがあり、その対応が好きだったからです。加えて、コロナの時期は立地のいい店が閉まったりして飲食業界が殺伐としていたので、逆にチャンスだと感じました。そして、食文化が根強く、天神ビッグバンなどで勢いづく福岡で、たこ焼き屋をしようと決めました。
――たこ焼き屋に決めた理由を教えてください。
コロナがあけて来日する外国人が増えることを視野に入れて、日本の食として候補に浮かんだのは、ラーメン、うどん、たこ焼き、お好み焼きの4つでした。そのうち、福岡の街にはたこ焼き屋が少なく、たこ焼きはラーメンに比べてチャレンジしやすく、味のバリエーションも豊富なこと、そして何と言っても私自身がたこ焼きを好きなこともあって選びました。
退職からわずか2か月で、こだわりのたこ焼き屋を開店
――出店に向けて、どのように準備を進めましたか?
天神か博多で出店しようと動き出したところ、友人が紹介してくれた経営者から「立地のいい店が閉まるので、その後にやらないか」と声をかけてもらい、今の大名の場所に決めました。そして、別の飲食店のオーナーからは、たこ焼きの作り方を教えてくれる人として、沖縄で飲食店を営むおばあ(沖縄で年配の女性を親しみを込めて呼ぶ言い方)を紹介してくれました。おばあに福岡に来てもらい、たこ焼きの作り方や仕入れ先などの基礎を教えてもらって、2021年10月にたこ焼き屋「nancle(なんくる)」をオープンしました。

――えっ、前職を辞めて、わずか2か月後にオープンされたのですか。
やるなら早くやりたくて、いろいろな縁に恵まれたおかげです。
――たこ焼きのこだわりを聞かせてください。
毎朝、丁寧にかつおだしを取り、その日に使い切るので、生地の風味と香りが格別です。また、見た目のインパクトを出したいと思い、いいだこという小さなたこを丸ごと1杯使っています。いいだこは、醤油とみりんと酒で煮つけています。
インフルエンサーがきっかけで話題になり、順調に成長
――2021年10月ということは、コロナ禍に開店されたのですね。
コロナ禍のため、お客さんが1日に3組の日もあり、勢いで開店したものの2か月後には「詰んだかもしれない…」と焦りました。ロスが出るので私のご飯は毎日たこ焼きで、「おいしいな」「お客さんが来ないかな」と思いながら、無料で配ったりもしました。
赤字が積み上がる中、4か月目に友達のつながりで出会ったインフルエンサーがうちの店を取り上げてくれて、その動画がどんどん拡散されたのを機にお客さんが増えました。自分でもインスタでPRしていたのですが、インフルエンサーの影響力を実感して、福岡はもちろん海外のインフルエンサーにもDMを送ると来店してくれる人もいて、話題になりました。日本から先に海外でコロナがあけて、観光客が増えたことが後押しになりました。

――経営については、どうやって学んだのでしょう?
基本的には自分で調べました。祖父から教わっていたのは、原価の割合、人を雇うこと、税金はきちんと納めることの3つでした。教えに従って、まだお客さんが少ない12月からアルバイトを雇いました。まだ毎月赤字でしたが、人を雇う経験も必要だと思い、思い切って採用しました。
――開業して4年半ほど経ち、状況はどうですか?
年商は1,000万円、2,000万円、3,000万円と順調に伸びて、今は6人雇用しています。1日に100組ほどお客さんが来られて、開店時やお昼どきには行列ができることもあります。できるだけ手早く提供して、行列を短くできるように心がけています。
もちろん今も毎朝だしを炊いていて、味には自信があります。私は毎日食べているので、おいしいかどうか分からなくなって、福岡の他店のたこ焼きを食べて回ったことがあります。すると、毎朝ちゃんとだしを炊いている店はほぼない印象で、うちのたこ焼きはおいしいと改めて実感しました。
融資を受けて新たな店を展開し、次なる事業も探る
――西日本シティ銀行をパートナーに選ばれたそうですね。
自己資金で始めたのですが、事業が軌道に乗って拡大するために資金が必要になり、どこの金融機関がいいか先輩経営者に相談しました。すると、「西日本シティ銀行が一番いい。西日本シティ銀行は信用できる」と教えてくれたんです。それで、西通りにあるビジネスサポートセンター福岡に相談に行き、融資を受けることができました。
――事業をどのように拡大されるのですか?
国内外から来る観光客の玄関口になるような場所に出店したいと思っていたところ、公募があったので応募したら選ばれました。応募者の中でダントツに若い経営者と言われました。まだ情報解禁前なので詳しいことは話せないのですが、来年新しい店をオープンする予定です。
――憧れていた自営業の道が叶って、いかがですか?
とても楽しいです。お客さんが増えた時期は仕込みが追いつかなくて、数日ほぼ寝ずに仕込みをしていましたが、きついときほど自分が成長している感覚があり、起業ってこんなに大変なんだと、それも含めてうれしかったです。
中学生の頃はお金持ちになりたいと思っていたけれど、起業してみて、大切なのはお金ではないと分かりました。好きなことを仕事にして、自分が考えた通りにビジネスが進んだときが一番の快感、お金は結果としてついてくるものですね。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
日本文化の一つとして、たこ焼きをもっと広めていきたいです。熊本で出店したいという方がいて、昨年10月にフランチャイズの1号店が誕生しました。実は、東京でやりたいという方もいたのですが、こちらに余裕がない時期で実現しませんでした。これから主要都市や観光地に店を展開していければいいなと考えています。同時に、最近は勉強したり、街を見たり、人脈を広げたりしていて、新たな事業も模索していきます。
nancleについて
■会社概要
会社名:nancle
URL:https://nancle.shopinfo.jp
所在地:福岡市中央区大名1-2-6アメニティ大名1F
設立:2021年10月
代表:小林 俊貴
■事業内容
たこ焼き店
■問い合わせ先
電話:080-9104-2431
Instagram:https://www.instagram.com/nancle._fukuoka/
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817

◎コワーキング施設「Zero-Ten Park DAIMYO」
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Writer
フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。
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