多胎児家庭を支えるアプリ「moms」を開発・運営|株式会社pono 牛島智絵さん

双子の妊娠・出産に直面した際、世の中に情報がないことでマイノリティであることに直面。育児でもさまざまな課題にぶつかったことがきっかけで、アプリ「moms」を開発・運営する株式会社ponoを立ち上げた牛島智絵さんにインタビュー。起業家として次から次へと事業を展開する牛島さんのこれまでと現在のご活躍、気になる今後についてお聞きしました。
株式会社pono 代表取締役CEO 牛島智絵(うしじま ちえ)さん
京都市出身。2008年からオンライン集客やマーケティング支援を個人で開始。2018年には仲間と副業支援のマッチング事業を行う会社を設立し、代表を務める。2021年に双子の男子を出産したことで、多胎児に関する情報の少なさや育児の過酷さを知り、退任して多胎児家庭の支援を行うように。SNSでの発信からスタートし、全国の多胎児家庭とつながり支え合う環境をつくるため一般社団法人を設立。その後、2025年2月5日(ふたごの年のふたごの日*)に株式会社ponoを設立し現在に至る。
目次
起業のタイミングで来た福岡で、結婚・出産
――株式会社ponoの設立以前にも、会社を運営されていたとお聞きしました。

牛島:はじめての起業は2008年から個人ではじめたマーケティング支援の事業です。その事業がきっかけで福岡に来ました。マーケティング支援に興味を持っている人は多く、経営者や士業の方などに参加してもらい、勉強会を行っていたんです。その参加者が次第に増えたことで、「会社を立ち上げてしっかりとしたコミュニティをつくろう」と、2018年に仲間たちと会社を立ち上げ代表を務めることになりました。
――そのまま福岡でご結婚・ご出産されたんですね。
牛島:はい。福岡で仕事を続けていく中で、縁あって夫と出会い、結婚。そのまま福岡で妊娠・出産することになり、それが、現在展開している事業をはじめるきっかけになりました。
――双子のお子さんの出産後、会社は続けられたのでしょうか?

牛島:産後1か月半で仕事に復帰しましたが、出産したことで自分の状況にも気持ちにも大きな変化が起きていたんです。自分の価値観が変わったこと、双子育児が想像以上に大変だったことで会社経営とのバランスがうまく取れなくなり、自分にとってのライフワークバランスが見つかるのかわからなくなっていきました。その結果、2022年6月で前職を退任しました。
集まった多胎児家庭の「声」を社会に届けたくて
――お子さんの妊娠・出産が現在の事業のきっかけになったのでしょうか?
牛島:多胎児の妊娠・出産・育児は負荷が大きいことから、SNSなどで情報発信をしている方は多くありません。だからこそ「私の情報や体験が役に立てば」と思い、妊娠中から自分が調べたことなどをSNSで発信するようにしたんです。後からよく考えると、その時点ですでに「多胎児家庭のつながりをつくりたい」と考えていたように思います。
――他の多胎児ママとつながり、交流会が盛んになっていったのだそうですね。
牛島:はい。というのも、産後はSNSの発信もままならず、多胎育児の過酷さを自分自身で痛感していました。「情報がほしい」と思って育児アプリをダウンロードしても、双子の情報はほとんどありません。大手企業に問い合わせてみても、「双子への対応は考えていない」または「実現していない」という回答。社会との距離を感じ、「何とかしたい」という思いが積み重なっていきました。
そこで、まず最初に行ったのは、SNSで交流していた多胎児ママさんたちと実際に顔を合わせる機会をつくること。3人のママと「会おう」と盛り上がっていたのですが、他にも参加希望のママたちがいたので呼びかけた結果、なんと24組の家庭から申し込みが入り、急きょ屋外イベントに。他県からの参加もあったので、カメラマンやベビーカーのメーカーの方にメンテナンスに来てもらうなど、ママたちに喜んでほしくてさまざまな企画をしました。
――同じ悩みを持つ仲間が集まったことが、今の事業のきっかけになったのでしょうか?

牛島:そうですね。最初の交流会の後、1年間で5回の交流会を行ったのですが、その度に多胎児家庭ならではの困りごとがどんどん集まりました。「みなさんの声を行政に届けたい」と思ったものの、上手く進めることができなくて……。「それならば」と、県政や市政に働きかけてみた結果、直接資料をお渡しできた時は嬉しかったです。
でも、広く社会に声を届けるには、信用が必要になります。そこで、まずはひとつのプロジェクトにしようと思い、活動資金をクラウドファンディングで集め、2023年に一般社団法人を立ち上げたんです。その法人は現在も続いており、私が代表を務め、訪問看護ステーションや多胎交流などの事業を行っています。
多胎児家庭を支援するため、法人化とアプリ開発を実現
――株式会社ponoの設立までの経緯を教えてください。
牛島:社団法人を立ち上げ、必要と思う支援活動をしていたのですが、「交流会に来ることができる家庭とは繋がることができても、来ることができない家庭とはつながれない」ことが課題でした。家の中にいながらでもスマートフォン一つで外の世界と繋がることができる仕組みを構築し、社会設計を変えていかないと、これから先も多胎児家庭の支援の形は何一つ変わることはないと思ったことが株式会社ponoを設立したきっかけです。
――アプリ開発と法人化の準備を同時に進めていったのですか?

牛島:多胎児家庭の支援について声を大きくしていくためにもアプリ開発が必要だと考えていたので、両方に同時に取り組んでいきました。たくさんの人に活動を知っていただきたくてビジネスコンテストにも挑戦していたのですが、そこで驚いたのは、ビジネスとしてアピールするようになったことで話を聞いてもらえるようになったこと。一個人として目の前の支援に取り組むだけで社会を変えるのは難しくても、ビジネスとして広く社会と関わっていくことで声を届けることができる。そのことをより実感した出来事でした。
アプリの開発にあたっては、福岡市の「ふるさと納税を活用したソーシャルスタートアップ成長支援事業」に採択いただき、資金を調達できたことが大きな一歩になりました。会社の設立はスタートアップカフェを活用して2025年2月5日(ふたごの年・ふたごの日*)にスムーズに行うことができ、多胎アプリ「moms」も2025年3月5日(ふたごの年・みつごの日*)にリリースすることができました。
一緒に働いてくれているのはSNSで呼びかけて集まったメンバーなのですが、100名以上の応募があり、仲間もたくさん集まりました。多胎育児をしながら働くというハードルは高いので、「一人ひとりがその時にできることをできる範囲でする」という自由な働き方で、さまざまな得意分野を持つ人材が活躍してくれています。
――西日本シティ銀行とのご縁はどのようにして生まれたのでしょうか?
牛島:西日本シティ銀行さんと同じグループ会社である株式会社シティアスコムさんのビジネスコンテストで優秀賞に選んでいただいたのがきっかけでご縁ができたんです。行政の補助金は自分たちで支払った後に戻ってくるという流れのものがほとんどなので、融資を受けることができ助かりました。西日本シティ銀行のビジネスサポートセンターの方も常にお力添えをいただいていて感謝しかありません。
福岡から全国へと展開中。次の世代にもつなげていきたい
――会社設立と「moms」のリリースから1年半が過ぎた現在の状況を教えてください。

牛島:「moms」には「多胎SOS機能」があり、福岡県内のすべての市区町村の相談窓口がアプリに登録され、ワンタップでアクセスできるようになっています。全国各地の自治体に働きかけ、現在は600以上の市区町村との連携が実現しました。福岡県のホームページでは、各自治体の多胎支援情報を集約したページも公開してくださっています。全国では現在1府10県。これからも諦めずにアプローチしていきます。
――これからに向けての課題や目標はありますか?
牛島:多胎育児が大変なのは赤ちゃんの時だけではありません。先輩たちに聞いたところ、18歳の成人までは多胎児特有の悩みがあるのだとか。そのため、アプリのユーザーは妊娠期から18歳ぐらいまでの約19年間利用していただけるアプリを目指しています。
また、お子さんが大きくなった方は「自分の経験を何かに役立てたい」と思ってくださっていることがデータ上でわかりました。そうした方々の思いが叶う場所づくりも行い、支援を次の世代につないでいくことができたらと思っています。さらに、5年後、10年後の話になりますが、将来的には「moms」で育った子どもたちに向けたサービスも展開していけたら……など、夢は尽きません。
*2025年2月5日(ふたごの年・ふたごの日)、2025年3月5日(ふたごの年・みつごの日)は通称です。
株式会社ponoについて
■会社概要
会社名:株式会社pono
URL:https://moms-app.com/
所在地:福岡市中央区大名2丁目6-11 Fukuoka Growth Next
設立:2025年2月5日(ふたごの年・ふたごの日*)
代表取締役CEO:牛島智絵
■事業内容
アプリ事業・スクール事業・エンゲージメントマーケティング・多胎支援
■問い合わせ先
メール:mt☆moms-app.com(☆を@に変更してアドレス記載)
お知らせ
▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。
▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
[NCB創業応援サロンHAKATA]
福岡市博多区博多駅前3丁目1-1西日本シティビル9階
営業時間:10:00〜18:00(月〜木曜)、12:00〜20:00(金曜)
TEL:0120-012-817
[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
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北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
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Writer
プランナー、編集者、ライター、ディレクター
大学卒業後、印刷会社に就職し『FUKUOKA STYLE』編集部に所属。独立後は企業や官公庁、大学などの広報物の編集・取材・ライティング等に携わる。現在は福岡市内でクリエイティブオフィス「shirotoiro」を運営。プランナー・編集者・ライター・ディレクターとして活動しながら、エステサロン「momotoiro」の運営も行う。食べることが大好きですが、グルメライターではありません。
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