「リスキリング」の意味とは?人材育成での重要性や実施するための5ステップを解説!

By もろふし ゆうこ |
公開日 2022.11.30

DX対応は、どの企業でも大きな課題のひとつです。変化の波に対応できる人材を育てるために、リスキリングを実施する企業が増えてきました。職種に関係なくそれぞれの人材がデジタル化に適応できるよう、学びの機会を設けているようです。この記事では、リスキリングの意味や導入のステップ、企業事例を解説します。

リスキリングの意味と注目される背景

まずはリスキリングについて、概念や背景、意味が似ているビジネス用語を具体的に解説します。

リスキリングとは

社会人が新しい職業につくため、もしくは現在の仕事の大きな変化へ適応するのに必要なスキルを習得するという意味です。企業が従業員に対して職業能力の再教育・再開発を実施します。

リスキリングを実施する意味

デジタル化が発展する中で、先端技術を持つ人材へのニーズが高まり続けています。リスキリングを通じてデジタルスキルの再開発を目指すことは経営戦略においても大きな意味があり、重要性を増しているのです。

経済産業省でもリスキリングが推奨されており、サポート体制がてこ入れされました。世界の潮流であるデジタル化に対応し、ITを駆使した経営戦略を実行できる日本企業の創出を目指しています。

出典:経済産業省「経済産業省の取組」

リスキリングが注目されている背景

社内人材の職業教育については、これまでもさまざまな形で取り組まれてきました。その中でもなぜ今、リスキリングが意味あるものとして注目されているのでしょうか。

2020年(令和2年)開催の「ダボス会議」

2020年(令和2年)、世界経済会議の年次総会であるダボス会議でリスキリングが議題の1つとして取り上げられました。2030年までに、全世界の10億人に対してより高い水準の教育・スキル・仕事の提供を目指すことが提案されました。

DX対応の重要性

第4次産業革命といわれている技術革新の中でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)はあらゆる分野で取り組むべきテーマとなっています。技術革新のスピードが速い分野のため、リスキリングはDX人材の育成という意味で語られることが多いです。

リスキリングの類似語

意味が似ている言葉として、以下の3つが挙げられます。

アウトスキリング

アウトスキリングとは、転職などの理由で将来会社を去る見込みのある従業員への職業訓練を意味します。企業の価値創造の一環として、特に従業員の出入りが激しい欧米で注目されている方法です。

リスキリングは自社の従業員に向けた職業教育を意味する点で、アウトスキリングと異なります。

アップスキリング

アップスキリングとは、従業員が現在の職種の中でさらに技術を高めていくという意味です。職種内での担当部門や職位アップを主な目的としています。

リスキリングは、現在の職種以外の新たな知識・技術の習得も視野に入れた職業訓練です。アップスキリングと比べて、学びの範囲がより広いという違いがあります。

リカレント

リカレントとは、社会人が自らの意思・タイミングで新たなスキルを身につけるという意味です。主に大学や外部機関などで学び直します。リスキリングは学びを促す主体が企業、リカレントは学ぶ人自身という点が大きな違いです。

とはいえ「仕事に役立つスキルを習得する」という概念自体は、リスキリングと共通しています。

リスキリング実施のメリットとデメリット

企業がリスキリングを行うにあたり、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

リスキリングのメリット

リスキリングの意味や重要性を理解し実践することで、以下のメリットを得られます。

人材不足解消の対応策になる

どの業種においても、人材不足の課題を抱えています。特にDX人材は、新たに外部から雇用するのが困難になりつつあるのが現状です。

デジタル化に対応できる人材を社内で確保するための具体策として、早期のリスキリング実施は意味のある方法といえます。

企業への愛着心(エンゲージメント)向上につながる

リスキリングを行うことで、従業員から見た企業の印象も変わるでしょう。従業員の業務に対する意欲を高めたり、キャリア形成につながったりと、よい効果が得られます。その結果、企業への愛着心(エンゲージメント)も向上するのです。

従業員のエンゲージメントが上がれば、生産性や業績アップも期待できます。リスキリングにより、企業と従業員双方にメリットがあるのです。

自律意識の高い人材を育てられる

リスキリングは、従業員が自発的にスキルを磨こうとする社内風土形成のきっかけにもなり得ます。自律意識の高い人材は、企業にとって貴重な財産といえるでしょう。

特にDXについては、技術の進化スピードに後れを取らないことが肝要です。自ら学び実践する姿勢がある従業員は、企業価値を高める起爆剤となります。

ビジネス活性化と従業員満足を両立できる

リスキリングは社内で新たなアイデアが生まれたり、DX推進により業務効率化を図れたりする意味もあります。企業の価値や業績が上向くだけでなく、従業員のワークライフバランスをとりやすくなるといったメリットも得られるでしょう。

リスキリングで得られたデジタル化のスキルを最大限活かせれば、会社業績の追求と従業員の満足度向上を両立させることも可能です。

リスキリングのデメリット

一方、リスキリングには以下の課題もあります。

リスキリングに注力できる教育担当者が必要になる

社内のリソースでリスキリングを進めるときは、DX教育のプログラムを綿密に組む必要があります。他の業務と掛け持ちしている教育担当者では、手が回らなくなるケースもあるので注意しましょう。

教育プログラムのアウトソーシングをしないのであれば、リスキリング専任の教育担当者を設置するのがおすすめです。

時間と手間、コストがかかる

プログラムの作成や対象となる従業員の選出には、時間と手間がかかります。また、研修教材や資格取得等に必要な費用も、視野に入れる必要があります。

時間とコストを抑えようと単発の研修や最低限の学習内容にしてしまっては、せっかくの機会が台無しです。リスキリングを意味あるものにするため、スケジュールと予算をしっかり確保しましょう。

社内人材の転職リスクを考慮した環境・制度づくりが求められる

散見されるケースとして、リスキリングによりスキルを習得した従業員の退職・転職があります。特にスキル習得後のキャリアステップが明確でない場合、そのリスクは高まります。

自分が学んだ知識や技術を活かせる職場で働きたいと考えるのは、自然なことです。リスキリング後のキャリアステップや待遇について、企業と従業員で必ず共有しましょう。

リスキリング導入のステップと企業の実施事例

自社でのリスキリング導入を具体的に進めるには、どうしたらよいのでしょうか。ここからは、導入のステップと、すでに実施している企業のケーススタディを紹介します。

リスキリングを価値あるものにする導入ステップ

リスキリング導入の意味を高めるには、実施計画と研修プログラム、社内体制を整える必要があります。次の5ステップを参考に、一歩ずつ進めていきましょう。

1)経営戦略に沿ったリスキリング計画を立てる

経営戦略を再度確認し、これから重要性が増しそうなスキル・人物像をはっきりさせるところからスタートします。現時点で社内に該当するスキル・人材が見当たらない場合、リスキリング実施の必要性が見えてくる、という流れです。

強化したスキル・人物像が明確になることで、リスキリング計画を立てやすくなります。リスキリングを行う期間や対象者、実施後の効果測定について、計画を立ててみましょう。

2)計画に基づいたプログラムと対象者を決める

リスキリング計画に基づいて、具体的な学習プログラムを作成します。リスキリング対象者が学びやすい学習方法を用意しましょう。

社内研修、eラーニング、ウェビナー、外部機関での講習など、多彩な種類があります。できれば、対象者が複数の選択肢から選べるようにするとよいでしょう。

3)リスキリングに適した社内体制を整える

通常業務を続けながら新たなことを学ぶのは、リスキリング対象者にとって何かしらストレスのかかることです。リスキリングの概念や学ぶことの意味をしっかりすり合わせ、対象者の意見によく耳を傾けましょう。

就業時間内での学習時間を確保したり、キャリア・報酬面の条件を整えたりなど、社内体制を構築することも大切です。対象者に学習することを丸投げするのではなく、丁寧にサポートすることが欠かせません。

4)習得したスキル・知識を実践できる場を設ける

リスキリング終了後、実務で活かす機会を多く作ることも重要です。学んだことは、実践しなければ意味がありません。業務で実際に取り組み、結果をフィードバックするというサイクルを繰り返します。

特に新しい取り組みを実践するのは、時間や労力を要します。リスキリング対象者が悩むことなく、前向きに取り組めるような環境づくりに努めましょう。

5)振り返りの機会を設け、継続的に効果を測定する

新たなスキル・知識のもとで業務に取り組んでもらいながら、リスキリング対象者と定期的に意見交換をします。フィードバックを丁寧に行うことで業務改善や対象者自身の成長意欲、他の対象者へのサポート体制充実につながります。

効果測定は、定期的に実施しましょう。時間をかけて成果が出てくるケースもあるため、すぐに結果が出なくても慌てないことです。

リスキリング導入企業の取り組み事例

実際にリスキリングを行なっている企業は、どのように取り組んでいるのでしょうか。代表的な事例を見ていきましょう。

社内および関連企業にDXの基礎教育を実施

DX対応に注力すべく、関連企業を含めた基礎教育を行なっています。社内に複数あった教育機関も1つに統合されました。専任の担当者を置くことで、リスキリングの概念に基づいたプログラムを進められています。

研修を実施する意味を高めるべく、研修後のキャリアステップについてもより明確化されました。研修後、戻った職場で学んだことを実践しやすい環境づくりも進んでいます。

文系社員向けのリスキリングプログラムを策定

文系社員の割合が多めの企業では、デジタル化に対応できる人材の育成が急務でした。そこで、文系社員向けのリスキリングプログラムを新設したのです。

リスキリングを行う意味から丁寧に説明し、研修の必要性についてしっかりと共有していきます。また、国家資格の取得を視野に入れた研修もあり、初めてIT学習に触れる人でも目標を立てやすい環境づくりが行われています。

社外の人材にも学びの機会を提供

社内のリスキリングと共に、社外の関係者も学べる機会を提供している企業もあります。社外関係者への研修機会を持つことで、将来の人材雇用につなげたいという狙いもあります。デジタル化に対応できる人材は世界的に見てもニーズが高く、採用に苦戦する企業も増えているのです。DX対応に向けた社内整備をリスキリングで行いながら、人材の外部調達も視野に入れている事例です。

リスキリングを意味あるものにするためのポイント

リスキリングを成功させるには、いくつかのポイントがあります。意味のあるリスキリングにするためにも、以下のポイントを押さえましょう。

リスキリングの重要性を周知する

なぜ今リスキリングが必要なのか、対象者に意味をしっかり伝えることが大切です。リスキリングは、単発の研修とは異なることを説明します。変化の波に対応する最先端で活躍できる人材になって欲しいなど、企業側の考えをシェアし理解を深めてもらう機会を持ちましょう。

経営戦略にマッチするコンテンツを選ぶ

研修コンテンツが充実していても、社内の課題や経営戦略に合うものでなければ意味がありません。コンテンツの選出はとても重要なため、時間をかけてしっかりと検討すべきでしょう。

場合によってはアウトソーシングも検討する

コンテンツ選びを適切に行える人がいないこともあります。特にDX分野は難解なものも多く、自社の担当者だけでは判断できないこともあるでしょう。

その場合は、外部機関の専門家に委託するのもよい方法です。リスキリングに長けた機関とタッグを組めれば、より適切なリスキリングを実施できます。

知識・スキル習得への意欲を維持できる仕組みづくりを実施する

学ぶ側の従業員は、リスキリングにより業務以外にやらなければならないことが増えます。当初はリスキリング研修に意味を見出せていても、学び始めの意欲を維持し続けるのはなかなか大変です。

スケジュールやキャリアステップ、待遇面などの仕組みを整え、従業員がモチベーション高く学べるよう工夫しましょう。

社員の意見に耳を傾け、積極的に導入する

実際に学んでいる側からの意見は貴重です。リスキリング担当者には気づけない現場の声に耳を傾けましょう。研修は受けたが学んだことを活かせる場がないという声は、意外と多くあります。

また、教育担当者と部門担当者との間で意思疎通ができているかも重要です。「業務時間内の研修実施は労働力を奪われてしまう」と不満に感じる上長がいることもあります。研修の必要性について丁寧に説明し、意見を聞くことが大切です。

まとめ

リスキリングは従業員自身も、企業もステップアップできるチャンスです。また、リスキリングの実施計画を立てる取り組みは、自社の現状を把握するよい機会にもなります。概念を理解して実践することで、経営戦略を前に推し進める鍵となるでしょう。

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